魂の進化と
サイケデリックス

魂の進化と
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人間は自分の意識を変容させることが大好きです。そして幻覚作用を持つ植物が昔からその手段を人間に与えてきました。そうした植物はいったいなぜ、陶酔作用のある化合物を産生するのでしょうか?
人間は自分の意識を変容させることが大好きです。そして幻覚作用を持つ植物が昔からその手段を人間に与えてきました。そうした植物はいったいなぜ、陶酔作用のある化合物を産生するのでしょうか?
Illustration of a forest of mushrooms at night. The mushrooms are dark blue and in shadow, and dim light illuminates the background to a dark aqua.

昔から黒魔術に使われてきたエクアドルの珍しい地衣類を研究していた科学者たちは、奇妙なことを発見しました。この Dictyonema Huaorani とは、キノコ以外では初めてシロシビン(「マジック・マッシュルーム」の幻覚作用を引き起こす成分)が見つかっただけでなく、アヤワスカに含まれる幻覚成分である DMT も産生することがわかったのです[1]。そして、意識変容作用を求めて摂取される珍しい植物はこれ以外にもたくさんあります。

幻覚作用のある植物を摂取するという話や伝統は、人間のあらゆる文明に存在しています。アメリカ南西部の原住民や南アメリカの人々は何百年にもわたって、未来を予知するビジョンを得るためにアサガオの種を食べてきました[2]。1676年、ジェームズタウンで起こったベイコンの乱を制圧する任を受けた兵士たちは、ヨウシュチョウセンアサガオの葉を食べて何日もトリップしたといいます[3]。中世のヨーロッパではヒーラーの女性たちが、幻覚を引き起こすベラドンナ、マンドレイク、ソーンアップルを煮て薬を作りました。

人間は生まれつき、意識変容をもたらす植物やキノコに惹かれるようにできているのです。マジック・マッシュルームからアヤワスカ、ある種の苔類にいたるまで、地球の人類の短い歴史の中で、私たちは常に意識を変容させる方法を追い求めてきました。どのキノコが私たちの意識を拡大し、どのキノコを食べたら死んでしまうのかを突き止めてくれた祖先たちに感謝すべきでしょう。

植物はなぜ陶酔作用のある化合物を産生するのか?

植物やキノコは人類よりもずっと昔から存在します。ではいったいそれらはなぜ、人間にとってこれほど魅力的な化合物を作るようになったのでしょうか?

植物の移動はゆっくりとしていて、お腹を空かせた周囲の虫や動物に頼るしかありません。そこで進化というものが登場します。生き物は、種として生き残り繁栄するためのさまざまな特徴を進化させるのです。そしてその中には化学的特性も含まれます。コカイン、シロシビン、モノアミン酸化酵素阻害薬、オピオイド、ニコチン、DMT、そしてメスカリンはいずれもアルカロイド(植物塩基)です。

植物性アルカロイドは一般的にかなり苦く、手頃な食事にありつこうとしているお腹を空かせた動物を寄せ付けないようにするのに役立ちます。植物はまたアルカロイドを、成長を調節し、栄養分を処理し、ストレスの多い状況に対処するのにも使います。そしておそらくは運命のいたずらで、これらのアルカロイドを摂取すると私たちはとてつもないハイを経験するのです。

人間をハイにしたり植物を動物から護ったりする化学物質は、アルカロイドの他にもいろいろあります。植物は、たとえば干ばつなど、動物以外の危険を軽減させ、成長を促進し、細胞を調節させるためにさまざまな化合物を用います[4]。たとえば大麻草について考えてみましょう。大麻草がカンナビノイドを産生するようになったのはおそらく、繊細な植物細胞を紫外線から護るためです[5]。そしてカンナビノイドは、テルペノイド化合物という、虫を惹きつけたり防いだりするために発達したもっと大きな化合物のグループの一部です。

幻覚剤はなぜ人をハイにするのか?

植物はこれらの化学物質を、自分の生存を確かなものにするために用います。では、それを摂取することに人間がこれほど惹かれるのはなぜなのでしょうか?

実はこうした化学物質の一部は、人間の生物としての機能を利用して、私たちの世界の見方を大きく変容させます。たとえば幻覚作用のあるキノコやペヨーテというサボテンは、中枢神経系にあるセロトニン受容体を刺激することで私たちの意識を変容させますし、テトラヒドロカンナビノール(THC)といった大麻草に含まれる成分は、身体と脳全体に存在するカンナビノイド受容体に作用することで私たちの気分を変化させるのです。こうした受容体は、私たちの健康に欠かせないシステムの一部です。こうしたシステムがきちんと機能していれば私たちは気持ちが良いのです。

人間は、文字が生まれる以前から、人を酔わせる物質を儀式の一部として使ってきました。テキサス州のシャムラ洞窟からは、紀元前 3750 年のペヨーテが、儀式に使われた遺物とともに出土しています。世界中でシャーマンたちは、大いなる力とつながるためにキノコや植物を使ってきたのです。そして今またそれが始まろうとしています。陶酔作用のある植物は、私たちが世界を理解するのを助けてくれました。そして多くの人が、私たち自身について、この宇宙についての、より深いところにある真理につながることができたのです。

進化上の利点

陶酔作用のある植物を求める動物は人間だけではありません。すべての哺乳動物にはカンナビノイド受容体とセロトニン受容体があります。おそらくはそれで、さまざまな動物が幻覚作用のある植物を食べているのが目撃されているのです。ジャガーがアヤワスカのつるを齧ったり、トナカイがマジック・マッシュルームを食べたり、サルが発酵した果物を美味しそうに食べたという報告があります。人間がごく微量のシロシビンを摂取すると、物の輪郭を認知する能力が高まり、視力が改善されるという仮説もあります。捕食動物から身を護ることはもちろん、狩りの獲物を生きる糧としていた初期の人類にとって、そうした作用は生き残るための強みとなったことでしょう。

突飛に聞こえるかもしれませんが、陶酔する、という行為は、自然界では根源的な生きる原動力の一つなのかもしれません — それが、新しくてより有利な行動パターンにつながるのです。幻覚剤はもしかしたら、単に自然が偶然に生み出したのではなく、私たちの進化と霊的な発達には欠かせない要因なのかもしれません。



Zoe Sigman は元 Project CBD のプログラム・ディレクター。Broccoli Magazine のサイエンス担当エディター。


この記事の初出は Broccoli Magazine に掲載された簡略版です。掲載元の許可なく複製・転載を禁じます。

 


脚注

  1. Michaela Schmull, Manuela Dal-Forno, Robert Lücking, Shugeng Cao, Jon Clardy, and James D Lawrey “Dictyonema huaorani (Agaricales: Hygrophoraceae), a new lichenized basidiomycete from Amazonian Ecuador with presumed hallucinogenic properties,” The Bryologist 117(4), 386-394, (7 November 2014). https://doi.org/10.1639/0007-2745-117.4.386
  2. Vgl.R. E. Schultes: A contribution to our knowledge of Rivea corymbosa. The narcotic ololiuqui of the Aztecs. Botanical Museum of Harvard University, Cambridge (Massachusetts). https://www.samorini.it/doc1/alt_aut/sz/schultes-a-contribution-to-our-k….
  3. “Jimsonweed and ‘Natural Fools.’” Herb Museum, www.herbmuseum.ca/content/jimsonweed-and-natural-fools.
  4. Greger, H. Alkamides: a critical reconsideration of a multifunctional class of unsaturated fatty acid amides. Phytochem Rev (2016) 15: 729. https://doi.org/10.1007/s11101-015-9418-0.
  5. David W. Pate. “Possible Role of Ultraviolet Radiation in Evolution of Cannabis Chemotypes.” Economic Botany, vol. 37, no. 4, 1983, pp. 396–405. JSTOR, www.jstor.org/stable/4254533.
  6. Prehistoric peyote use: Alkaloid analysis and radiocarbon dating of archaeological specimens of Lophophora from Texas, Journal of Ethnopharmacology, Volume 101, Issues 1–3, 2005, Pages 238-242, ISSN 0378-8741, https://doi.org/10.1016/j.jep.2005.04.022.
  7. Kotler, Steven. “Animals on Psychedelics: Survival of the Trippiest.” Psychology Today, Sussex Publishers, 29 Dec. 2010, www.psychologytoday.com/us/blog/the-playing-field/201012/animals-psyched….
  8. Fischer, R., Hill, R., Thatcher, K. et al. Psilocybin-induced contraction of nearby visual space. Agents and Actions (1970) 1: 190. https://doi.org/10.1007/BF01965761

 

Revision date: 
Feb 13, 2020

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