セックスと大麻

セックスと大麻

セックスと大麻の関係について、実際にわかっていることを検証します。
セックスと大麻の関係について、実際にわかっていることを検証します。
A flat lay of grapefruits cut in half interspersed with condoms on a bright orange background.

座薬、潤滑剤、マッサージオイル、ベープペン…..。性欲を高めると謳う大麻製品はいくらでもあります。大麻が快感を高め、セックスライフを充実させてくれる、と主張する人も後を絶ちません。

2018年には、スタンフォード大学の研究によって、日常的に大麻を使用している人は大麻を使わない人と比べてセックスの回数が 20% 多いことが明らかになり、大きな話題になりました。しかも、いくつかの調査によれば、大麻ユーザーはセックスの回数が多いだけでなく、セックスの質も良いというのです。このことは、多くの人を悩ませている、セックスに関するよくある問題の治療に大きく関わってくるかもしれません。

クリーブランド・クリニックの報告によると、性機能にまつわる問題に悩むアメリカ人は、女性の 43%、男性の 31% にのぼります。ところが現在、性的障害に対する効果的な治療法は残念ながらまったく不十分です。もしも大麻が性機能や性的能力の問題—性欲の衰え、膣の乾燥、早漏、オーガズムに達しない、その他さまざまな問題—の改善に役立つのであれば、まさに何百万人もの人々が待ち望んでいた救済策になるでしょう。

大麻とセックスは相性がいいとの主張は多々ありますが、現時点では、大麻がセックスに直接影響を与えるということを証明した臨床試験はありません。大麻草を研究することの法的な障壁、そしてセクシャリティというものが非常に微妙かつ複雑であることが、大麻の使用と性機能の関係についての研究を妨げてきたのです。

ですから、大麻、あるいはカンナビジオール(CBD)やテトラヒドロカンナビノール(THC)といった大麻草の成分の一つが性行為にどんな影響を与えるかについて調べた無作為化二重盲検プラセボ対照試験は行われていません。ただし、いくつかの動物実験、アンケート、関連した研究などはバラバラにですが存在しており、セックスの世界と大麻の世界に興味深いつながりがあることを示しており、そこには、さらなる研究を正当化するに十分な説得力があります。

大麻は媚薬か?

大麻は何千年も昔から媚薬として使われてきました。ほんの一例を挙げれば、古代インドのアーユルヴェーダの施術者はしばしば、男性の精力と生殖能力を高めるために大麻を使うよう勧めたものでした。『BioMed Research International』誌に掲載されたレビュー記事は、「アーユルヴェーダにおける媚薬の概念」というセクションの中で歴史的なデータを引用し、大麻のことを、射精を遅らせ射精機能を高める植物と呼んでいます。

どうやら人間は随分長いこと、大麻とセックスを組み合わせて良好な結果を得てきたようです。でも、研究者がこの分野に注目するようになったのは比較的最近のことです。

『Journal of Clinical Psychology』誌に1979年に掲載された論文は、大麻と性機能の間に関係があることを示す本格的な証拠を示したごく初期の研究の一つです。84人の大学院生に、大麻とセックスに関する体験について尋ねたところ、「大麻使用の経験が豊富」な人は、「大麻使用の経験が豊富」な人は、大麻はオーガズムの質を高めると言い、媚薬として扱われるべきであると考えていました。論文の著者ら(Dawley et al)は、「このことは、性的障害の治療にマリファナを使うことを研究する価値がある可能性を示している」と結論しています。

同様に、1984年に大学生を対象に無記名で行われたアンケートによれば、3分の2以上の回答者が、大麻を使うと快感と満足感が高まると答えました。『Journal of Sex Research』に発表されたこの研究ではまた、「回答者のほとんどが過去に性交の準備としてマリファナを使ったことがあり、20% は定期的に使っている」こともわかりました。

実は、大麻とセックスの関係について私たちが知っている情報の多くは、アンケートを通して集められたものです。これには問題があります。というのも、アンケートというのは人の記憶に頼るものだからです。アンケートの回答は非常に主観的です。「セックスを楽しんだ』という答えは、回答者によって意味することがさまざまなのです。

エンドカンナビノイド・システムとセックス

なぜ大麻はこれほど性的な親密さと相性が良いのでしょうか?

チェコの科学者らが『Psychopharmacology』誌に 2017年に発表した研究によれば、大麻は右側の側坐核と呼ばれる部分を刺激します。これは性的興奮の制御に重要な役割を果たす部位です。脳の「快楽の中心」とも呼ばれる側坐核には、カンナビノイド受容体 CB1 が高密度に発現しており、THC はこれを直接的に、また CBD は間接的に活性化します。

CB1受容体は、脳と体全体にある重要な調節機構としてさまざまな生理的過程のバランスを整え、大麻の作用を私たちがどのように体感するかを調整する、エンドカンナビノイド・システム(ECS)と呼ばれるものの一部です。

カンナビノイド受容体は、生殖器官そのものだけでなく、性ホルモンを産生する器官にも存在しています。

実は、ECSと性機能の生理的仕組みには少なからず重なり合う部分があります。まず、カンナビノイド受容体は、生殖器官そのものだけでなく、性ホルモンを産生する器官にも存在しています。カンナビノイド受容体はまた、性機能に重要な役割を果たし、テストステロン、エストロゲン、オキシトシンと作用しあって性的反応を調整する、ドーパミンおよびセロトニン作動性のニューロンの軸索終末にも発現しています。つまりECSは、さまざまなホルモンや信号伝達物質の流れや増減に影響するのです。

イタリアの研究者マウロ・マッカローネ(Mauro Maccarone)は ECS のことを、哺乳動物の「守護天使」であり「門番」であると言います。数多くの基礎研究によって、カンナビノイド受容体による信号伝達は、性的興奮からオーガズム、受精、着床、胎児の成長に至るまで、生殖過程のあらゆる段階に関係していることがわかっています。

興奮とオーガズム

アメリカとカナダの研究者が共同で2012年に行った研究は、ECS とセックスの関係について新たな点を明らかにしました。著者ら(Klein et al)は、21名の健康な女性がエロティックな映像とそうでない映像を見る前後での、内因性カンナビノイド 2-AGAEA(脳が作るマリファナ様の化合物)の血中濃度を計測しました。また光電式容積脈波記録法により、膣の性的興奮度も計測しました。これは、ある器官、あるいは体全体の容積変化を観察する方法です。さらに「arousometer」と呼ばれる装置で、映像が流れている間の主観的な興奮度を継続的に計測しました。

この実験の結果は、『Journal of Sexual Medicine』誌上で発表されました。内因性カンナビノイドの血中濃度と女性の性的興奮度の間には、正の相関がありました。AEA の血中濃度は女性が性的に興奮すると大幅に減少し、2-AG の血中濃度も「生理学的な性的興奮度、全体としての主観的な性的興奮度、性的興奮が継続的に高まった状態での性的興奮度と強い負の相関」がありました。

「マスターベーションによるオーガズムは、人体内において内因性カンナビノイド 2-AG を放出させる」と題された 2017年の論文によれば、興奮が高まってクライマックスに達すると、体内の内因性カンナビノイドの血中濃度が突如高まります。この論文を発表したのはドイツの科学者は、性的快感のみならず「食べる、運動する、人と交流するといった満足感が得られる行動において、内因性カンナビノイドは非常に重要である」と述べています。『Journal of Sexual Medicine』に掲載されたこの無作為単盲検試験の結果によれば、2-AG はオーガズムの後に放出され、「性的興奮とオーガズムの後の満足感に貢献している可能性がある」ことを示しています。

2019年に『Women’s Sexual Health』誌に掲載された、373人の女性を対象としたアンケートでは、セックスの前に大麻を使用した女性の半数以上が、性欲が高まり、より良いオーガズムを得たと答えています。2019年に発表された『カンナビノイドが女性の性機能に与える影響』と題されたレビュー論文でもこれと似た結果でした。この論文は、セントルイス大学の産科・婦人科・女性の健康学部の助教授である医師ベッキー・リン(Becky Lynn)らが書いたもので、大麻とセックスの組み合わせは、より長く満足感の高いオーガズムと関連があると結論しています。

性的なヒーリング

生理学的な観点から言うと、大麻とセックスに良い関係があるというのはどういう理由なのでしょうか? おそらくそこには数十の要因があると思われます。たとえば THCCBD にはともに血管拡張作用があります—つまり、大麻は血管を弛緩・拡張させるのです。そして血管の拡張は性的興奮に重要な役割があります。大麻はまた、良いセックスの妨げになることが多い不安感痛みを抑えることによって性的機能を改善します。ブリティッシュ・コロンビア大学が行ったアンケートでは、男女合計199人の回答者のうちの 70%が、大麻を使うとセックス中、よりリラックスできると答えました。

2011年に行われた、現存する研究のレビュー論文「男性の性の健康に大麻が与える影響」では、著者である2人のカナダ人医師が、大麻は実は勃起不全を助長する可能性があると述べていますが、同時に同じ論文の中で、「これらの研究のほとんどは、その結果が相反し、矛盾している」とも結論しています。このように結果が食い違っているのは、大麻やその主成分である THCCBD に二相性があり、低用量と高用量では逆の作用を持つことが原因かもしれません。

THCCBD が作用するカンナビノイド受容体 CB1の用量依存的なシグナリングは、大麻でハイな状態でのセックスの質に大きく影響する可能性があります。CB1受容体が性機能に重要であることを示す研究は数多く、2008年にカナダで行われた研究では、CB1受容体の拮抗剤が射精を促進させることを明らかにし、CB1が「射精に関連した性機能障害の 治療薬にとっての新たな標的」となる可能性を示しています。

このことからは、CB1を刺激する低用量の大麻は射精を遅らせ、高用量では受容体の感受性を鈍くして信号伝達を阻害し、その結果射精を促進させると推論することが可能です。同様のことが、大麻が性欲に与える影響についても言えるかもしれません—つまり、少量の大麻は性欲を高め、大量の大麻には性欲を鎮めるということです。この仮説を裏付けるものとして、1978年にマウスを使って行われた実験では、低用量の THC を投与すると脊柱前彎(性欲の指標)が強化され、高用量では強化されませんでした。

ですから、大麻と性の快感について言えば、大麻はちょっと少なめの方が楽しさが増すのかもしれません。


Project CBD の寄稿者グレッチェン・リディッカー(Gretchen Lidicker)は、ライター、コンテンツ・クリエーター、ブランド・コンサルタントであり、また健康とウェルネスに関するあらゆることに精通している。著書に『CBD Oil Everyday Secrets』があり、またウェブサイト mindbodygreen の「健康」セクションのエディターの経験を持つ。



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 参照文献

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Revision date: 
11月 26, 2019

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