CBDが人に及ぼす影響のエビデンス、CBDとケタミン、その他

CBDが人に及ぼす影響のエビデンス、CBDとケタミン、その他

カンナビノイドという急成長中の研究分野から、最新情報をお伝えします
カンナビノイドという急成長中の研究分野から、最新情報をお伝えします

科学誌には、毎週々々、大麻、カンナビノイド、エンドカンナビノイド・システムに関する数十本の論文が掲載されます。そして研究のペースはどんどん速まっています。

2018年から2020年まで、カンナビジオール(CBD)に言及した論文の数は、788本から1,408本へとほぼ倍増しました。現在の増加率がこのまま続けば、2021年には再びその数は大幅に増加し、CBDについて述べた論文は約 1,800本に及ぶでしょう。

これに THC に関する研究を加えれば、その予想数は 2,600本近くに膨らみます。さらに、マイナー・カンナビノイド、内因性カンナビノイド、人体に備わっているカンナビノイド受容体、より広く「エンドカンナビジオーム」と呼ばれるものを構成する要素などについても研究が行われています。急速に拡大中のカンナビノイド研究という分野は、現役の研究者でさえ、自分の狭い専門領域を超えようものなら圧倒されてしまうほどですから、一般消費者やヘルスケア従事者にとってはなおさらです。

CBDの効果に関する臨床現場からのエビデンス

こうした研究のうち、実際に人間を対象として行われたものは多くはありません。論文の多くは、動物実験(通常はラットかマウス、あるいはゼブラフィッシュを使います)の結果について書かれたものです。中にはもっと理論寄りで、私たちにとって一番の関心事である、人間の健康に対する実際の効果とはかけ離れているものもあります。

そんななか、カナダの研究者らによるある新しい論文に私たちが注目したのは、それが、ケベック州にある医療大麻クリニックで診療を受けており、最長6か月にわたって日常生活の中で CBDTHC の両方を使用した多数の患者(正確には 279人)を対象に、その多岐にわたる使用結果を評価したものだからです。

『Journal of Cannabis Research』誌に掲載されたこの論文には、大変興味深い治療結果がいくつか含まれています。ただし、注意すべき重要な点は、(日常生活の「自然的観察」による研究の場合、対照群というものがないためそれが当然なのですが、)この観察結果から因果関係は導き出せない、ということです。

3か月間にわたる正式な治療の後の症状を、治療開始前の数値と比較すると、症状が中等度から重度の患者では、疼痛、不安、うつが大幅に軽減され、健康度が高まりました。6か月後、症状の改善度は比較的安定していました。ただし、症状が軽度だった患者ではこのような症状の改善は見られませんでした。

症状の評価は主観的かつ自己申請によるものなので、この結果には被験者の治療に対する期待というバイアスがかかっており、それがプラセボ効果につながる可能性がある、と著者らは指摘しています。でもこのことは、なぜ中等度から重度の症状のある患者の方が、症状が軽度の患者よりもずっと治療の効果があるのか、という疑問には答えません。「この調査の結果は、CBDによる治療にまつわる思い込みや誤った情報を正す一助となり得るものであり、さらなる調査が必要である」と論文は結論しています。

ケタミンとCBD:一緒の方がうまくいく

ケタミンと CBD はどちらも、エンドカンナビノイド・システムを媒介とする作用を発揮します。ではこの二つを一緒に投与するとどうなるのでしょうか?

解離性・幻覚性のある麻酔薬として、ケタミンは近年、大うつ病性障害の治療のために、アメリカの数多くのクリニックで使用されるようになっています。ブラジルとデンマークの研究者チームは、ケタミンと同様に抗うつ作用があることで知られる CBD が、ケタミンが引き起こす精神興奮性の副作用を軽減させられるかどうかを究明しようと試みました。

実験では、ケタミンと CBD を、それぞれ単独で、あるいは2つを同時にマウスに投与しました。『Neuropharmacology』誌に掲載された結果によれば、CBD は、ケタミンが持つ抗うつ作用は保持したまま(人間の「うつ」に似せた行動モデルを使っての結果)、有害な精神興奮作用を軽減(「自発運動」の動物モデルを使っての結果)させました。

著者らは、別の動物モデルを用いてこの結果を再現することの必要性を強調していますが、同時に、それが可能であると考える確固とした理由があるとも述べています。すでに、人間を対象とした研究でも動物実験でも、CBDには、他の化合物(ときに目立ちすぎる THC を含め)が引き起こす不快な副作用の一部を防ぐ効果がある、ということが明らかになっているのです。

オメガ3脂肪酸は世代を超えて作用する

今年1月、Project CBD は、食生活におけるオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸のバランスが、エンドカンナビノイド・システム(ECS)を通じてその人の総合的な健康に影響を及ぼすという記事を掲載しました。ブラジル、イタリア、カナダの研究者らによるチームが最近『Journal of Nutritional Biochemistry』誌に発表した論文は、人間に欠かすことのできないこうした食品化合物と ECS  の関係について、私たちの理解を深めてくれるあるエビデンスを提示しています。

実験では、雌のラットに対し、交尾の 15日前と妊娠中に、オメガ3脂肪酸が豊富な餌、オメガ3脂肪酸が欠乏している餌、または対照群用の通常の餌という3種類の食餌から1種類を与え、子どもが生まれた2日後に、親ラットと子どもの大脳皮質と海馬を分析しました。

予想通り、オメガ3脂肪酸が欠乏している餌を与えられた母ラットでは、CB1 受容体の発現が少なく CB2 受容体の発現が増大していました。そして興味深いことに、これらのラットの子どもにもこれとまったく同じ現象が見られたのです。

さらに、オメガ3脂肪酸が豊富な餌を与えられたラットの子どもでは、オメガ3脂肪酸由来の内因性カンナビノイドである DHEAEPEA の量が、海馬・大脳皮質のいずれにおいても多かった一方、大脳皮質内では、オメガ6脂肪酸由来内因性カンナビノイド、2-AG の量が減少していました。

これらの実験結果は、オメガ3脂肪酸を餌として与えられたことに関連する脳内の内因性カンナビノイド量とカンナビノイド受容体の数の変化は、少なくともラットにおいては、母から子へと伝えられる可能性があることを示しています。この研究からは、こうした変化に具体的な健康への影響があるかどうかは明らかではありません。

ビスフェノールAと肥満とCB1受容体

ゼブラフィッシュの話に移りましょう。ゼブラフィッシュとは、人間の生物学的システムを解明するために、マウスやラットの代わりにしばしば動物モデルとして使われる小さな魚です(名前の通り縞模様があります)。

中国の3つの研究機関の科学者らが構成する研究チームは、プラスチックの合成に使われる悪名高いビスフェノールA(BPA)と、関連するビスフェノールの一つ、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)に、それらが生活環境に一般に存在する濃度で雄のゼブラフィッシュを暴露させました。その後に行われた分析により、これらの有害な化学物質は食欲を増大させ、CB1受容体の活性化を通して肥満を誘発すること、また、これ以外に少なくとも4種類のビスフェノールが CB1 受容体に結合できることが明らかになりました。

『Journal of Hazardous Materials』誌で発表されたこれらの研究結果は、2020年5月の Project CBD の記事で言及したデータとも一致しており、ビスフェノール、フタル酸エステル、パラベン、パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(PFAS)、有機リン系殺虫剤などを含む外因性内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)が引き起こすさまざまな健康被害の少なくとも一部は、エンドカンナビノイド・システムの働きを乱すことによって、人間にも及ぶということがわかります。



Nate Seltenrich は、サンフランシスコのベイエリアに住む科学ジャーナリスト。環境問題、神経科学、薬理学を含む幅広いテーマについて執筆している。

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Revision date: 
7月 8, 2021

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