
大麻が持つ素晴らしい医療効果が大麻合法化を大きく後押ししたことは確かですが、医療用に使えるということだけでなく、社会的な公正さの重要性もまた、どんなに強調してもしすぎることはありません。
麻薬撲滅戦争は、その開始の当初から、刑事司法制度において組織的に人種差別を行うための策略でした。黒人の若者は、白人の若者と比べ、大麻関連の違反による逮捕の確率が5倍です。大麻合法化が拡がるなか、これまでも、現在も、黒人をはじめとするマイノリティ集団を傷つける政策を何とかすることが必要不可欠です。大麻を合法化し、投資家たちが市場になだれ込むのを許許しても、麻薬撲滅戦争に最も苦しめられた人々が「グリーンラッシュ」から無視され、取り残されたままでいるのでは、改正は十分ではありません。
逆説的ですが、大麻を合法化すると、大麻関連の違反行為で刑罰を受ける人が、特に 18〜20歳の間で増加することがあります。オレゴン州とワシントン州の研究者らがこの点について論じた論文が、『American Journal of Preventive Medicine』に掲載されています。これは、2014年の合法化以前と以後の3年間ずつをとり、未成年による大麻関連犯罪の発生率を分析したものです。合法化前の3年間、大麻関連犯罪は減少傾向にありましたが、この傾向は成人が大麻所持を許されるようになると完全にストップしています。2014年以降の大麻関連犯罪は、未成年による使用は減少したものの、全体では 30% 増加したと言われています。
大麻関連逮捕数の人種による差
ただし朗報もあります。「合法化以前は、黒人未成年の逮捕率は白人未成年の逮捕率の2倍だったが、合法化にその差が減少した」— つまり、黒人未成年の逮捕率は、合法化後、白人未成年の逮捕率より 25% 高いだけとなっているのです。(これはもちろん前進ではありますが、本来そこに少しでも差があるべきではありません。)ただしオレゴン州に住むネイティブ・アメリカンについては大麻の合法化による状況の改善はあまり見られず、合法化の前も後も、白人と比べて逮捕される確率が 2.5倍でした。
この論文には言及すべき問題点が一つあります。著者らはさまざまな人種集団に対する検挙率を比較していますが、各集団における使用率を考慮していません。大麻使用の人口動態によっては、そのことが分析結果に影響する可能性があります。
これと同じ研究者らはまた、2019年のワシントン州における、人種差別を動機とする逮捕件数を検証しています。そこからわかったのは、ワシントン州では大麻合法化によって大麻関連逮捕件数全体は減少していますが、黒人と白人の逮捕率の開きが倍加したということです。ワシントン州では、黒人は白人と比べて逮捕される確率が5倍なのです。
参照論文: Implications of Cannabis Legalization on Juvenile Justice Outcomes and Racial Disparities
Project CBD のチーフ・サイエンス・ライターであるエイドリアン・デヴィット・リー( Adrian Devitt-Lee)は、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで数学の博士過程に在籍中。
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