
大量の飲酒どころかそこそこの量の酒を飲んだだけでも人体には、心臓血管疾患から肝硬変まで、さまざまな問題が発生します。こうした悪影響の多くは、アルコールに炎症を悪化させる作用があることが根本原因です。ただし免疫系は非常に複雑で、「炎症」という言葉はほとんどの変性疾患や加齢に伴う疾患に当てはまりますから、実際に炎症を助長している分子を特定することが重要です。インターロイキンは、免疫細胞の動きを調節する一群のタンパク質のことです。全部ではありませんが、そのほとんどが炎症反応を増強させます。
コロラド大学ボルダー校の研究者らは、アルコール使用障害を持つ人たちの体内のインターロイキンの量を調べました。すると、飲酒はインターロイキン-6 の増加に関係していましたが、この関係は大麻のユーザーでは弱いことがわかりました。この保護作用が特に重要であるのは、インターロイキン-6 はアルコールへの渇望の強さとも関連しているからです。また大麻ユーザーは、別のインターロイキン(1β)の量でも少なめでした。この2つのインターロイキンは、外傷性脳損傷にも関与しており、脳の機能とシナプス可塑性に関与しています。
こうした作用経路が長期的に見た大麻とアルコールの使用による作用に影響していることは間違いありません。残念ながらこの論文の著者らがとった、「この研究は予備的なものであるため、多重検定に対する補正は行わない」という統計的選択には疑問が残ります。予備的な研究であるからこそ、この補正を行うことはより重要ですし、さらには、統計データが不適切なときに「統計的に有意」という言い方をすべきではないのです。飲酒量の多い人において大麻の使用が保護的な作用を持つかどうかについては、さらなる研究によって今回の結果を再現する必要があるでしょう。