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薬用キノコは、何千年もの昔から、健康と長寿を促進する強力な薬として使われてきました。こうしたキノコには、免疫力を高め、炎症をやわらげ、病気を予防し、意識を鋭敏にし、活力を与え、神経を鎮め、夜間の安眠を助け、またがんと闘う可能性さえあります。

キノコには驚異的なパワーがあります。人間の健康維持に役立つだけでなく、地球の健康にも欠かせない役割を果たしているのです。キノコは、プラスチックの C-H結合を解離させる酵素を分泌することがわかっており、環境や土壌から有害物質を除去するのに役立ちます。これをマイコレメディエーション(mycoremediation)と呼びます。

キノコの菌糸体

森の中を歩けばおそらく、木の根元や切り株に生えているキノコを一つや二つ目にするでしょう。でも、菌界の大部分は、実は私たちの目には見えないところにあります。土中から頭を覗かせている美しいキノコは、「菌糸体」と呼ばれる地中のネットワークにつながっているのです。

地球上で最も重要な物質と言っても過言でないキノコの菌糸体は、地面の下にあり、地球上のすべての森の根系の周囲に張り巡らされています。菌糸体は地中に何キロも伸びて、キノコや周囲の木々・植物に栄養分を届けるだけでなく、土壌を浄化し、森中の有害物質や枯れた木を分解します。

菌糸体は、森の神経ネットワークと言ってもいいでしょう — キノコの専門家で『Mycelium Running』の著者であるポール・スタメッツ(Paul Stamets)は菌糸体を、地球に備わっている「天然のインターネット」と呼んでいます。キノコの菌糸体は樹木や植物の根系とつながっており、互いに栄養分を交換し合います。

キノコの菌糸体は、細くて白い糸のように見えます — 森へ行って、足元の木くずに手を突っ込んでみさえすれば、見つかるかもしれません。土の中に細くて白い筋が走っているのを見つけたら、それが菌糸体です。

子実体

キノコという言葉であなたが思い浮かべるのはおそらく、キノコの子実体でしょう — 土中からニョキッと伸びて、私たちが調理して食べるキノコの「実」の部分です。あなたが普段スーパーで買うキノコは、実はキノコの子実体なのです。子実体は、凝縮された菌糸体でできた、菌糸体の生殖構造です。キノコの子実体には、天然の多糖類である、βグルカンと呼ばれる薬用成分が含まれています。免疫系を調節することが知られているほか、キノコの薬用効果の多くはこの βグルカンによるものです。

ハイファ大学の研究者であり、『International Journal of Medicinal Mushrooms』誌のエディターであるソロモン・P・ヴァッサー(Solomon P. Wasser)教授によれば、薬用とみなされるキノコは少なくとも 650 種類あります。

『Rebel’s Apothecary』では、薬用キノコの中でも最も強力な、それぞれ異なる医療効果を持つ7種類に絞って紹介しています。

  • カバノアナタケ(Inonotus obliquus)
  • 霊芝(Ganoderma lucidum または Ganoderma tsugae)
  • ヤマブシタケ(Hericium erinaceus)
  • 冬虫夏草(Cordyceps sinensis)とサナギタケ(Cordyceps militaris)
  • マイタケ(Grifola frondosa)
  • シイタケ(Lentinula edodes)
  • カワラタケ(Trametes versicolor)

これらのキノコの医療効果については多くの研究が行われており、日常的なウェルネスにまつわる問題から、がんのような重篤な疾患まで、有望な結果が得られています。そしてこれらのキノコはすべて完全に合法です。一方「幻覚作用のある」シロシビン・マッシュルーム(マジックマッシュルーム)は非合法ですが、私の本の中で述べたように、やはり驚異的な治療効果があります。

キノコに含まれる薬

「薬用キノコ」とは、人間が摂取しても安全で、治療効果または健康促進効果を持つもののことです。そうした効果には次のようなものが含まれます:

  • 免疫系のバランスを整える
  • 活力と集中力の増強
  • 神経を落ち着かせる
  • 炎症をやわらげる
  • 抗酸化作用
  • 神経保護作用とニューロン新生作用
  • 血糖値を安定させる
  • 抗がん作用

薬用キノコの中には、スーパーで食材として買うキノコと同様に、調理して食べられる食用のものもあります。

では、キノコに含まれ、医療効果があることが証明されている成分とは何なのでしょうか? 薬用キノコにはそれぞれ固有の化学組成がありますが、共通しているのは βグルカンと呼ばれる多糖類で、免疫調節作用と抗腫瘍作用があります。また薬用キノコには、トリテルペン、代謝体、酵素が含まれ、いずれもキノコの持つ、免疫系と神経系をサポートし、炎症を抑え、活力、集中力、生命力を高める力に寄与しています。

“キノコは、人間の免疫系にとってのロックスターのような存在です。免疫力を穏やかにアップさせる強壮剤だと思えばいいでしょう”

さらに、薬用キノコにはそれぞれ、特有の薬用活性成分が含まれています。たとえばカワラタケには PSK と呼ばれる多糖類が、冬虫夏草にはコルジセピンが、霊芝にはガノデリン酸が、野生のカバノアナタケには、ベツリンおよびベツリン酸という強力な成分が含まれているのです。そしてそのそれぞれが、固有の薬となります。

「キノコは、人間の免疫系にとってのロックスターのような存在ですが、他の部分にも効果を発揮します — たとえば神経系、肝臓、心臓血管系その他です。それらを活性化するというよりも正常化させる働きがあるのです。免疫力を穏やかにアップさせる強壮剤だと思えばいいでしょう」。統合医療医として、助産師として、またハーバリストとして薬用キノコを診療に採り入れているアヴィヴァ・ロム(Aviva Romm)はそう説明します。

キノコから薬を抽出する

薬用きのこに含まれる成分の中には、水に溶けるもの(βグルカンや酵素)もありますし、アルコールを使って抽出しなければならないもの(トリテルペン)もあります。どちらの方法も有用な化合物の抽出が可能ですが、ほとんどの薬用キノコの場合、含まれる薬用成分のすべてを取り出すにはこの両方が必要です。薬用キノコからサプリメントを作る際は、有効成分のほとんどを抽出するため、(通常は熱水とアルコールを使って)二重抽出するのが理想です。

市販されている薬用キノコの抽出物やサプリメントの中には二重抽出の工程を経ているものもありますが、そうでないものもあります。ですから、買おうとしている製品の製造会社あるいはキノコの栽培者に確認して、その製品が最大限の効果を持つものであるかどうかを確かめることが大事です。

薬用キノコの世界に一歩足を踏み入れると、実に多種多様な製品があることがわかるでしょう。薬用キノコの形状には次のようなものがあります。

  • ティンクチャー
  • エキス
  • 粉末
  • カプセル
  • 乾燥キノコ
  • 生のキノコ
  • お茶
  • 食べ物や飲み物に含ませたもの

ヘルスフード店やネットショップでも、非常に高品質な薬用キノコ製品は手に入ります。ただし、できるだけ多くの治療効果を得られるように、二重抽出法で製造されていることをきちんと調べて確認しましょう。

キノコには、キチンと呼ばれる硬い細胞壁があり、人間の消化器系はそれを分解することができませんので、キノコの栄養分を取り出すためにはしっかり加熱することが必要です。さらに、キノコは生で食べるより調理すべきである、より重要な理由があります。

薬用キノコの用量ということになると、大麻と同じように、誰にでも効果を発揮する一定の用量があるわけではありません。

実は、生のキノコの中には、発がん性物質である可能性があるアガリチンという化合物を含むものがあります。マッシュルーム、クレミニマッシュルーム、ポートベロー・マッシュルームなどです。アガリチンは調理することで取り除くことができ、これらのキノコは調理して食べるよう勧められてるのはそれが理由です。これがどこまで懸念すべき問題であるかについては諸説ありますが、栄養価の面からだけ見ても、サラダバーでは生のマッシュルームは避けて調理してあるものを選ぶべきだと私は思います。

キノコはバイオアキュミュレーターであり(大麻もです!)、土中にあるもの(重金属や殺虫剤)を強力に吸収します。ですからキノコやキノコのサプリメントを買うときはできる限り、農薬を使わずに栽培されたもの、自然栽培認定を受けているものを選びましょう。

薬用キノコの用量

キノコのサプリメント製造者はそれぞれに、ラベルに用量を表記しています。ラベルに推奨された用量は少なめであることが多いので、始める用量としては適切でしょう。ただし、薬用キノコの用量というのは、大麻と同じで「誰にでも有効な」量というのが決まっているわけではありません。

幸いなことに、私の本の中でフォーカスしている7種類のキノコはどれも、きちんとした販売者から良質な製品を入手している限り、安全で毒性がないとされています。

日常的な健康維持のために薬用キノコを使うことを考えているならば、一般的には、初めは一日 1000〜3000 ミリグラム(1〜3 グラム)の抽出物(粉末、カプセル、またはティンクチャー)から始めることをお勧めします。これは通常、カプセルなら2錠、ティンクチャーならドロッパー1〜2回分、粉末なら小さじ1〜2杯にあたります。

より深刻な疾患の治療のために使うなら、より高用量の方が効果があるかもしれません。

サウスカロライナ州にある研究所、Mushroom Mountain で開催されたセミナーで、菌学者である トラッド・コッター(Tradd Cotter)は、「薬用キノコには、健康維持のための用量と治療のための用量がある」と言っています。体重 75キロの成人なら、健康維持のための用量は乾燥重量で1グラム、あるいは生で5グラムです。治療のための用量(たとえばがんの場合)は通常、健康維持のための用量の5倍ほどです。

製品も、人も、疾患もそれぞれ異なりますから、これはあくまでもごく一般的なガイドラインにすぎません。健康維持のための用量から始めて自分が感じる効果を観察し、主治医の監督の元で使いましょう。処方されている薬との薬物相互作用がないことを確かめてください。Memorial Sloan Kettering Cancer Center のウェブサイトでは、さまざまな薬草、キノコ、健康補助食品と医薬品の間にある薬物相互作用の可能性を一覧として見ることができます。

編集より:『The Rebel’s Apothecary』には、いくつかの薬用キノコの成分、使用法と医療効果、免疫力を高める食事のためのレシピが載っています。


ジェニー・サンスーシ(Jenny Sansouci)は『The Rebel’s Apothecary: A Practical Guide to the Healing Magic of Cannabis, CBD, and Mushrooms』の著者。認定ヘルスコーチであり、ウェルネスにまつわるウェブサイト Healthy Crush を運営している。


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