医療大麻と悪心

医療大麻と悪心

精神作用のないカンナビノイド、CBDは、セロトニンを分泌する受容体に作用し、比較的低用量で悪心(吐き気)と嘔吐を軽減させることがわかっています。
精神作用のないカンナビノイド、CBDは、セロトニンを分泌する受容体に作用し、比較的低用量で悪心(吐き気)と嘔吐を軽減させることがわかっています。

ローラは、主に薬物乱用障害患者の治療に携わっている医師で、彼女自身は近年大麻を使ったことはありませんでした。ですから、乳がんで抗がん剤治療を受けている間も医療大麻を使おうとしないことに、私は驚きませんでした。吐き気、そして必ず起きる吐き気を不安に思う気持ちは生活に支障をきたすほどのものでした。私とローラは一緒に家庭医療について学んだ仲でしたし、私は医療大麻が自分のがん患者の役に立っているのを知っていましたが、ローラに私のアドバイスを聞き入れてもらうのは大変でした。

ようやくのことで私はローラに、目盛り付きのベポライザーの使い方を教えました。これは効果が現れるまでの時間が短く、彼女が想像していた「人目につかないところでジョイントを吸う」のとはイメージが違うのです。ローラはまず、陶酔作用が耐えられる程度であることを願いながら、CBDTHC の比率が 2:1 の乾燥大麻を使ってみました。

抗がん剤投与の3日後にローラから電話があり、大麻の効果があったかどうか知るために私は急いで電話に出ました。電話の向こうでローラが泣いていたので心配になりましたが、彼女の言葉を聞いて感激しました。ローラは、「主治医の先生にもらったどんな処方薬よりも効果が出るのが早かったし、ずっとよく効いたわ」と言ったのです。

もしもあなたが、吐き気や嘔吐について読むだけで気分が悪くなるようなら、途中の、吐き気を催すかもしれない詳細は飛ばしてこの記事の最後だけ読んでください。吐き気とはそういうものです — その傾向のある人は、簡単に吐き気を感じるのです。

悪心(吐き気)と嘔吐は二つの異なった症状です。もちろん関係はありますが、その原因と治療法は大きく異なります。体験がある人は、悪心の方が嘔吐よりも苦しいと言います — 継続的な感覚だし、抑えるのがより難しいからです。

悪心とは何か?

悪心と嘔吐は人体が自らを護るための防衛メカニズムの一種であり、短い間で収まるのであれば、起きている間は最悪の気分ではありますが治療効果があります。でも、悪心が長い間続くとしたらどうでしょう? それが避けようのない副作用だったり、慢性的なもので、治まる見込みがないとしたら?

明らかな悪心の原因が見当たらないなら、患者は医師に相談してその根本的な原因を明らかにすべきです。特に、一日か二日経っても悪心が続くようなら、それはより深刻な病気の兆候かもしれません。

考えられる悪心の原因

  • 片頭痛
  • 頭部外傷
  • 発作
  • 感染を含む耳の病気
  • 乗り物酔い
  • 消化器系疾患
  • 虫垂炎
  • 肝炎
  • 膵炎
  • 細菌またはウイルス感染
  • 薬 — 抗がん剤その他
  • 毒素 — ヒ素、殺虫剤、リシン
  • つわり
  • 心臓発作
  • 疼痛
  • 精神疾患または情緒障害

悪心の仕組み

吐き気がするとき、体内では何が起きているのでしょうか? これには脳、消化器系、そして神経系が関係しています。悪心よりも嘔吐についての方が、その生理的な仕組みはよりよく理解されており、それを軽減させる治療法も豊富です。

症状を抑えるのに重要なものの一つが、脳のある部位と消化器官に存在し、神経伝達物質であるセロトニンを産生し、セロトニンと結合する受容体です。制吐薬として有名なゾフランは、セロトニンの分泌を阻害することで嘔吐を抑えます。

カンナビノイドで吐き気を抑える

精神作用のないカンナビノイド、CBD は、セロトニンを分泌する受容体に作用し、比較的低用量で悪心も嘔吐も軽減させることがわかっています。CBD はまた不安感をやわらげるのにも効果があり、慢性的な吐き気に伴う不安感を抑えるのにも役立ちます[1]。

THC が悪心を抑えるのに効果を発揮する人もたくさんいます。THC が脳の特定の部位にある CB1 受容体に結合すると嘔吐を抑えるのです[2]。また、THC が引き起こす高揚感もまた、あまり強すぎなければこの場合は治療価値があるでしょう。抗がん剤治療を行っている人、あるいは治療が難しい慢性的な悪心に苦しんでいるすべての人にとって、気持ちが明るく前向きになることは助けになるはずです。

非加工の、酸性状態の CBD である CBDA は、セロトニン受容体への作用がさらに強く、動物を使った基礎研究では、CBDTHC よりも強力な制吐作用を持つことが示されています[2,3]。CBDA は、乾燥・加熱される前の高 CBD の大麻品種に含まれ、加熱することによって、THCA が脱炭酸して THC に変化するのと同様に CBD に変化します。今のところ CBDA を摂るのに一番良い方法は、高 CBD の大麻草を生のままジュースにすることですが、将来的には CBDA 製品をディスペンサリーで買えるようになるかもしれません(訳注:2021年4月現在そういう製品はすでに存在します)。

がん治療に伴う悪心

抗がん剤治療の間に表れる心理状態には「ノセボ(反偽薬)効果」— 治療によるネガティブな作用を予測してしまうこと — も含まれ、それが予期性悪心を引き起こします。治療の副作用は避けようのないことだ、と考えるだけで悪心が起きるには十分なのです。最初の抗がん剤治療がうまくいかなければなおさらです。処方される制吐薬には予期性悪心を抑える効果はありませんが、一方、大麻がこれに有効である可能性が示されています。カナダのオンタリオ州にあるグエルフ大学の行動神経科学者、リンダ・パーカー教授は、THCCBDCBDA を含む数種類の植物性カンナビノイドが、動物実験で予期性悪心を軽減させることを明らかにしました。ヒトを対象にした臨床研究が待たれます。

どこから始めればよいのか

抗がん剤治療、放射線治療、その他、それとわかる原因によって吐き気を催している人には、医療大麻が助けになるかもしれません。THCCBDCBDA はいずれも、基礎研究では有望な結果が得られていますし、実際にその効果を体験している患者もいます。大麻草全草を使う方が、どのカンナビノイドを単体で使った場合よりも効果はありますが、悪心を抑えるのが目的の場合、どんなカンナビノイド・プロフィールを持つものを最初に試すべきでしょうか?

それはあなたがこれまで大麻を使った経験があるかどうかにもよります。今まで一度も使ったことがないなら、ローラのように、CBDが豊富で若干の THC も含むものから始めるのがよいでしょう。大麻に慣れるにつれて、必要に応じて THC の割合を増やしていくことができます。また、精神作用のない CBDA が手に入るなら、それも含めると良いと思います。

抗がん剤治療や放射線治療による悪心や嘔吐を抑えるために医療大麻を使うことは、それ以外の理由では大麻を勧めることのない多くの医師も賛成しています。効果があり、容認性も高く、作用機序が完全に解明されているわけではないものの効果が確かにあることがわかっているからです。患者は、その大麻がどこで栽培・加工されているかを知り、ラボ検査を受けた、汚染されていないものだけを使うべきです。品質の良いものであれば、ローラのように、一度使っただけで吐き気が治まるかもしれません。



医師であるステイシー・カー(Stacey Kerr)は、北カリフォルニア在住の教師、医師、著述家。著述と教育に専念するため開業医を辞め、数年間にわたってSociety of Cannabis Cliniciansと協働し、初めての、医療大麻に関する包括的なオンライン・コースを開発した。この記事は当初 Hawaiian Ethos に掲載されたもの。

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参考文献:

  1. Alexandre Rafael de Mello Schier et al, Cannabidiol, a Cannabis sativa constituent, as an anxiolytic drug, Rev Bras Psiquiatr. 2012;34(Supl1): S104-S117
  2. Regulation of Nausea and Vomiting by Cannabinoids, Br J Pharmacol. 2011 Aug;163(7):1411-22. doi: 10.1111/j.1476-5381.2010.01176.x.
  3. Bolognini et al, Cannabidiolic acid prevents vomiting in Suncus murinus and nausea-induced behaviour in rats by enhancing 5-HT1A receptor activation. Br J Pharmacol. 2013 Mar;168(6):1456-70. doi:10.1111/bph.12043.
  4. Keith A. Sharkey et al, Regulation of nausea and vomiting by cannabinoids and the endocannabinoid system Eur J Pharmacol. 2014 January 5; 722:
Revision date: 
2月 26, 2018

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