うつ病と大麻

うつ病と大麻

大麻はうつを脱出するのを助けてくれると言う人もいますが、大麻を使うとうつがひどくなると言う人も少数ですが存在します。大麻とうつには、本当はどんな関係があるのでしょうか?
大麻はうつを脱出するのを助けてくれると言う人もいますが、大麻を使うとうつがひどくなると言う人も少数ですが存在します。大麻とうつには、本当はどんな関係があるのでしょうか?
Highlights: 

• 多くの医療大麻患者が、大麻は抗うつ薬として効果的だと言っています。
• 大麻を嗜好目的で使用する人の中には気分を改善するために使う人も多く、深刻なうつ病や処方薬の使用を避けるのに効果が見られます。
• エンドカンナビノイド・システムの不具合はうつ病に関与しています。
THCCBD はともに、うつ病の動物モデルにおいては抗うつ作用を示していますが、ヒトを対象とした臨床試験はこれまでのところ行われていません。
• しっかりした医療大麻制度が運用されている州では、自殺率が全体で 5% 、20代・30代の若い男性についてはさらに大きく低下したことと医療大麻の合法化が関連付けられています。

Depressed asian woman

私たちの気分は、周囲の環境、人生で何が起こっているか、遺伝子、それに脳の活動などに影響されます。人と比べてとにかく機嫌が良い人もおり、CB1(カンナビノイド)受容体の遺伝子の研究によってその理由も一部わかっています [1]。ただし、人より上手に幸せを掴んで離さない遺伝子を持つ人がいるように見える一方で、人生には、避けることのできないそれ以外の要素があります。

脳内のエンドカンナビノイド・システム(ECS)の働きは、不安やうつに影響します。このことは、CB1 受容体の拮抗薬である処方薬リモナバンが肥満の治療薬として販売されたときにも明らかでした。リモナバンには、不安、うつ、自殺念慮といった、好ましからぬ心理的な副作用があったため、あっという間に回収されたのです。

これにより、脳内の CB1 受容体を阻害することが予想外の深刻な結果を招くこと、また ECS と気分の関係についてのさらなる研究の必要性がはっきりしました。

うつ病とは何か?

精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)によれば、大うつ病性障害(MDD)と診断されるためには、以下の診断基準の一つ以上に当てはまらなければなりません。

基準となる症状:

  • 抑うつ気分
  • ほとんどすべての活動に対する興味の減退
  • 体重や食欲が著しく変動する
  • 睡眠障害
  • 精神運動性の焦燥または制止
  • 易疲労性または気力の減退
  • 無価値感 — 自尊心の低さ
  • 思考力や集中力の減退、または決断困難
  • 死についての反復思考、自殺念慮
  • 人間関係から受ける拒絶感(私なんかいない方が人のためになる)、具体的な自殺の計画、自殺企図

その他の診断基準:

大うつ病性障害と診断されるには、抑うつ気分または無快感症が見られることが必要です。

大うつ病性障害の診断基準の他に以下の条件を満たしていることも必要です:

  • その症状が最低2週間続いていること
  • その症状が、臨床的に著しい苦痛または社会的・職業的・他の重要な領域における機能の障害を引き起こしていること
  • その症状が薬物の使用によって引き起こされたものではないこと
  • その症状が、統合性失調症や双極性障害など、他の精神疾患の診断基準に当てはまらないこと
  • • その症状が、近しい人との死別からくる喪失感によるものではないこと

大麻はうつ病の原因になるか?

スウェーデンで 45,000人以上を対象に行われた大規模な観察研究は、「交絡因子、中でも子ども時代に行動障害があったというマーカーを調整した後では、18〜20歳の大麻使用者が将来うつ病に罹る危険性はそうでない者と比べて高くはならなかった。観察対象の数が多いこと、背景因子をコントロールしていることから、我々の研究の結果は、大麻の使用はうつ病罹患の危険性を高めることはないという仮説を裏付けるこれまでの研究結果と一致する」と結論づけています。[2]

この結果と相反する研究もあります [3, 4, 5, 6, 7]。ただし、これらの研究の結果は決定的ではなく、社会、家族をはじめ、さまざまなライフスタイル要因の影響を排除することはできません。それでも、この問題についてはさらなる研究が必要であると結論しているという点では、すべての研究が合致しています。

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大麻はうつ病の治療に使えるか?

大麻は脳内で ECS に作用することでうつ病の治療に役立つ可能性がありますが、これまでのところ科学的に研究されているのは主にうつ病の動物モデルであり、その結果もさまざまで、またそれが人間に当てはまるかどうかもわかっていません。

2014年に発表された論文は、「基礎研究の結果は、内因性カンナビノイドによる信号伝達が活発になることで、従来の抗うつ剤による治療と同程度の行動的・生化学的影響が生じること、また抗うつ剤の多くがエンドカンナビノイド・トーンを変化させることを示唆している」と結論付けています [1]。治療効果が発揮される可能性はありますが、カンナビノイド科学の多くの分野がそうであるように、さらなる研究が必要です。

研究の結果がどうあれ、大麻には抗うつ作用があると主張する患者がいることは確かです。それらの患者は、大麻は生活におけるストレスに対処するのを助け、ときには物事に対してよりポジティブな考え方ができるようにしてくれると言います。

大麻を嗜好目的で使用する人の中には気分を改善するために使う人も多く、深刻なうつ病や処方薬の使用を避けるのに効果が見られます。

これには危険が伴っています。なぜならうつ病患者によるこうした自己治療は乱用につながる可能性があるからです。医療従事者が医療大麻に関する知識を身に着け、安全な使い方を患者に指導できるようになれば、使用と乱用を分ける曖昧な違いは、より管理しやすくなるかもしれません。

自殺率とマウス実験の限界

仮に大麻がうつ病の治療に効くとして、効果があるのは THC でしょうか、CBD でしょうか、それとも未だわかっていない別のカンナビノイドでしょうか? 初期段階の研究で効果を発揮しているのは THC です [8]。

ただし、スイスでマウスを使って行われた実験によれば、CBD にもその可能性はあります。この実験に使われたマウスに対して CBD は、抗うつ薬として確立しているイミプラミンと同等の効果がありました。CBD が、スイスのマウスに対して発揮するのと同じ効果を人間にも発揮する可能性はあるものの、それはまだ証明されていません。

きちんと設計された臨床試験の結果が不在である現在、参考になるのは、大麻が合法化された地域で見られる傾向です。アンダーソン博士のチームは、アメリカ疾病管理予防センターのデータの中から 1990年~2007年に関するものを取り出し、医療大麻の合法化が自殺率に与えた影響を試算しました。

分析の結果、「医療大麻の合法化は、総合自殺率を 5%、20~29歳の男性における自殺率では 11%、30~39歳男性の自殺率では 9% 減少させた」ことがわかりました [9]。

メンタルヘルスの維持という意味で、大麻が役に立つ人は大勢います。憂鬱な気分から抜け出したり、軽度の不安神経症の改善にも役立ちます。そのいずれの効果を持つかは、大麻の使用経験に影響するさまざまな要因と関係があります。

ヴィンチェンツォ・ミカーレ(Vincenzo Micale)博士は、ECS がうつ病に与える影響について文献をレビューし、「患者が大麻を使用する際、その用量、摂取方法、情動状態のベースライン、性格、環境や使用の意図などのさまざまな要因が、Δ9-THC が気分に与える作用に関与するという事実は無視できない」と述べています [8]。

医療とは人それぞれ違うもの

深刻なうつ病と、一日や二日気分が塞ぐというのは違います。大うつ病性障害と診断されるには、なくてはならない特定の症状があります。

大うつ病性障害は生命を脅かしかねない病気であり、医療大麻だけで自己治療を行うのは危険です。あなたご自身やあなたと親しい人が大うつ病性障害に当てはまる場合、きちんと治療の資格を持つ医師による治療を受けるのがベストな選択でしょう。

ECS は人それぞれ違うので、大麻が与える作用も人それぞれ異なり、どんな治療効果が得られるかは必ずしも予想できません。大麻とうつ病の間には単純な因果関係があるわけでもなく、その関係性はむしろ変化し続けるものです。カンナビノイドがうつ病からの回復に大いに役立つ可能性はありますが、その関係を明らかにするためにはさらなる研究が必要であることを繰り返しておきます。



医師であるStacey Kerrは、北カリフォルニア在住の教師、医師、著述家。著述と教育に専念するため開業医を辞め、数年間にわたってSociety of Cannabis Cliniciansと協働し、初めての、医療大麻に関する包括的なオンライン・コースを開発した。現在はハワイ島で Hawaiian Ethos のメディカルディレクターを務めている。この記事は当初 Hawaiian Ethos に掲載されたもの。


 

参照文献:

  1. Matsunaga M, Isowa T, Yamakawa K, Fukuyama S, Shinoda J, et al. (2014) Genetic Variations in the Human Cannabinoid Receptor Gene Are Associated with Happiness. PLoS ONE 9(4): e93771. doi:10.1371/journal.pone.0093771
  2. Manrique-Garcia et al. Cannabis use and depression: a longitudinal study of a national cohort of Swedish conscripts. BMC Psychiatry 2012, 12:112 http://www.biomedcentral.com/1471-244X/12/112
  3. Bovasso GB. Cannabis abuse as a risk factor for depressive symptoms. Am J Psychiatry. 2001;158(12):2033–7
  4. Rey JM, Sawyer MG, Raphael B, Patton GC, Lynskey M. Mental health of teenagers who use cannabis. Results of an Australian survey. Br J Psychiatry. 2002;180:216–21.
  5. Degenhardt L, Hall W, Lynskey M. Exploring the association between cannabis use and depression. Addiction. 2003;98(11):1493–504.
  6. Harder VS, Morral AR, Arkes J. Marijuana use and depression among adults: testing for causal associations. Addiction. 2006;101(10):1463–72.
  7. Tziraki S. [Mental disorders and neuropsychological impairment related to chronic use of cannabis]. Rev Neurol. 2012;54(12):750–60.
  8. Micale et al. Role of the Endocannabinoid System in Depression: from Preclinical to Clinical Evidence. Chapter · January 2014, P. Campolongo, L. Fattore (eds.), Cannabinoids and Modulation of Emotion, Memory, and Motivation, DOI 10.1007/978-1-4939-2294-9_5 
  9. Anderson et al. High on Life? Medical Marijuana Laws and Suicide. IZA (Institute for the Study of Labor - Bonn, Germany) Discussion Paper No. 6280, January 2012
Revision date: 
6月 5, 2018

本サイトの内容は、アメリカの非営利団体 Project CBD の記事を翻訳したものです。科学的エビデンスに基づいた情報の提供が目的であり、日本国内における違法行為を推奨するものではありません。 サイトのポリシーについてはこちらをご覧ください。

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