
1998年の春、英国政府は、GW製薬という企業に、大麻を栽培し、臨床試験で使うための、正確で品質が安定した抽出製剤を開発する認可を与えました。GW製薬の共同創設者の一人である医師、ジェフリー・ガイ(Geoffrey Guy)は、CBDを豊富に含む大麻草を使って、大麻草由来でかつ精神作用がほとんどあるいはまったくない製剤を作ることが可能であると考えており、英国内務省を説得したのです。
その夏、ガイは、インターナショナル・カンナビノイド・リサーチ・ソサエティ(ICRS)の学術会議で彼の取り組みについて講演しました。THC の持つ精神作用を打ち消す作用があると同時に、CBD はそれ自体に医療効果がある、とガイは説明しました。GW製薬が入手した高 CBD の品種は、アメリカ人の育種家デヴィッド・ワトソン(David Watson)とロバート・クラーク(Robert Clarke)が運営するオランダの種子会社、HortaPharm の遺伝子ライブラリーのものでした。
CBD を豊富に含む大麻草には、疾患の治療に使われてきた長い歴史があります。19世紀にはビクトリア女王が、高 CBD の大麻草を生理痛の緩和のために使っていました。動物実験では昔から、CBD が不安感をやわらげ、発作の強さや頻度を低減させることを示唆していました。でも数年前までは、カリフォルニアその他の地域では、高 CBD の品種は基本的に手に入りませんでした。THC の含有量を最大限に高めて強力な陶酔効果を持たせるための交配が繰り返されて、アメリカの大麻栽培の中心地であるカリフォルニア北部では、ほとんどの品種は CBD がごく微量になってしまっていたのです。
ソサエティ・オブ・カンナビス・クリニシャンの創設者であるトッド・ミクリヤ(Tod Mikuriya)博士は、医療大麻業界の誰もが使える分析ラボができれば、カリフォルニア北部で高 CBD の大麻品種が開発される可能性があると推測しました。
その後、ICRS、International Association for Cannabinoid Medicine、Patients Out of Timeといった団体の学術会議で、CBD に関する有望な研究結果が次々と発表されていきました。カリフォルニアの医師の中にはこうした研究の進展を詳細に追っている人がおり、また『オショネシー(O’Shaughnessy’s)』誌がそれについての記事を掲載したりもしましたが、私たちは単なる傍観者にすぎませんでした。それが変化したのは 2009年、オークランドにある検査ラボ、スティープ・ヒル(Steep Hill)が、ハーバーサイド・ヘルスセンター(Harborside Health Center)が持ち込んだ検体の中に、THC よりも CBD を多く含有する品種数種を検出したときでした。
間もなく、医療大麻が合法な州では、数十の検査ラボが カンナビノイドの含有比を計測するようになり、ときおり高 CBD の品種が見つかるようになりました。Project CBD は当初、データの集積のために「高 CBD」という言葉を、乾燥重量で CBD が 4% 以上のものと定義しました。CBD と THC がほぼ同量含まれているバランスの取れた品種の他に、CBD が主成分である品種— CBD:THC 比が 20:1 あるいはそれ以上のものも数種発見され、高 CBD のコンセントレートやオイルをはじめとする高 CBD の製品を製造する家内工業が誕生することとなったのです。
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