グルタミン酸—ある愛の詩

グルタミン酸—ある愛の詩

神経伝達物質について知ろう:興奮! グルタミン酸
神経伝達物質について知ろう:興奮! グルタミン酸

「神経伝達物質について知ろう」という連載の第一回です。

グルタミン酸よ、私はなぜあなたを愛しているのでしょう?

その理由を数えてみましょう…

あなたは私の脳を動かしてくれる。窒素を処分してくれる。神経を作動させてくれる。シナプスを作ってくれる。学ぶのを助けてくれる。記憶を保存してくれる。そして私がケタミンを摂るとき、あなたはいなくなって私を至福に導いてくれる。

エリザベス・バレット・ブラウニング風に続けることもできますが(訳注:前段落は英国の詩人 Elizabeth Barrett Browning の有名な詩 How Do I Love Thee をもじったもの)、グルタミン酸について一番重要な事実はシンプルです。グルタミン酸は、脳内で最も重要な興奮性神経伝達物質なのです。

シナプスが発火したいとき、神経細胞が信号を送りたいとき、青信号を出すのがグルタミン酸です。脳はグルタミン酸を使ってそれを許可するのです。

一方、それと正反対なのが GABA という、最も一般的な抑制性神経伝達物質です。実は GABA はグルタミン酸から合成され、二つともエンドカンナビノイド・システム(ECS)によって調整されます。だからこそカンナビノイドには、神経の興奮と抑制の両方を制御する力があるのです。

そしてその真中に、均衡の取れた状態があります。

タンパク質の原材料

グルタミン酸は神経伝達物質であると同時に、タンパク質の原材料であるアミノ酸の一種です。事実グルタミン酸は、私たちの食物に最も多く含まれるアミノ酸であり、旨味と呼ばれるものを生み出します。このように、どこにでもあるという事実が、グルタミン酸が人間にとって必須の神経伝達物質であることがわかるのに時間がかかった原因の一つでもあります。グルタミン酸が神経伝達物質であるという考え方がようやく広く受け入れられるようになったのは 1970年代であり、アセチルコリン、ノルエピネフリン、セロトニン、ドーパミンその他のメッセンジャー分子が同定されてから数十年も経っていました。どうやら科学者にとっては、このよくある食物成分が脳内の電気系統の原動力であるとは想像しづらかったようです。

血液が脳を満たすのを防ぐ保護システム、血液脳関門は、グルタミン酸の通過を見事に遮断します。私たちの血液に含まれるグルタミン酸の量はニューロンにとっては有害だからです。この保護装置があるので、グルタミン酸を摂取しすぎても脳を傷つけることはないように見えます。ただし、てんかん、脳卒中、外傷性脳損傷などが起きると、その結果グルタミン酸が急増し、神経細胞の過剰興奮(興奮毒性)を通して脳に損傷を与えます。そのような場合、グルタミン酸が受容体に結合するのを阻害する医薬品を使って長期的なダメージを防ぐことができます。

グルタミン酸はニューロンの興奮性を細胞の外からコントロールします。グルタミン酸受容体は細胞の外側にあるので、重要なのは細胞外液中のグルタミン酸の量です。これを調節するために、細胞は細胞膜を通してグルタミン酸を自分の中に取り込むことでその量を減らします。グルタミン酸は神経興奮だけでなく神経系の可塑性(学習能力)の主要なメディエーターでもあるので、適切な場所に、適切なときに、適切な量のグルタミン酸があることが何よりも重要です。統合失調症はグルタミン酸系の不調によるものだという仮説もあります。

グルタミン酸系の仕組みは非常に多岐にわたっており、複雑で、この短い記事では説明しきれません。さまざまな種類の輸送体、受容体、そしてグルタミン酸の量を調節する酵素のほか、グルタミン酸そのものにも色々な形(配座)があり、それによってその機能やどの酵素が結合するかが違います。神経系にとってのグルタミン酸の重要性のおかげで、非常に多数の疾患とグルタミン酸には切っても切れない関係があります。そして、エンドカンナビノイド・システムにグルタミン酸の増減を調節する力があることが、カンナビノイドが驚くほど多岐にわたる疾患に奏効する主な理由なのです。

作用の仕組み

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脳には主にグルタミン酸を放出するニューロンがあります。この「グルタミン酸作動性ニューロン」は脳全体に存在し、その表面には CB1 カンナビノイド受容体があります。CB1 受容体が活性化すると、その場所でグルタミン酸が放出され、神経シグナリングが強まります。内因性カンナビノイドは、星状膠細胞(脳の免疫抑制細胞)をグルタミン酸を介して刺激することによってシナプス伝達を強化します。これは、エンドカンナビノイド・システムがマスター・レギュレーターとしての役割の中でグルタミン酸を利用する方法の一つです。

遺伝子操作によって CB1 受容体を持たないマウスは、小脳のグルタミン酸作動性平行線維がめちゃめちゃになります。CB1 受容体はまた、海馬と皮相全体でグルタミン酸を使って脳の発達を助けます。カンナビジオール(CBD)が、グルタミン酸、GABA、そしてドーパミンの遺伝子発現に影響することは科学的に確認されていますが、2020年 10月に発表された論文は、カンナビゲロール(CBG)にも同様の作用があるらしいことを示しています。

さらに、CB2 カンナビノイド受容体が NMDA と呼ばれるグルタミン酸受容体と「異種複合体」を形成することも科学的に解明されています。異種複合体は比較的最近になって発見されたもので、2つ以上の種類の異なる膜受容体が絡まり合い結びついて受容体複合体を形成し、結合前の受容体のいずれとも異なった性質、結合作用、下流効果を持ちます。初め研究者たちは CB2 受容体が脳に存在するとは思っていませんでしたが、現在では、少数の CB2 受容体が脳内に発現し脳の健康を護っていること、また、脳が損傷を受けると CB2 受容体が急増して免疫反応の調整を助けることがわかっています。CB2 受容体が主要なグルタミン酸受容体と複合体を形成できる、ということは、カンナビノイドが神経性疾患に対して治療効果を持つ可能性を示しています。


グルタミン酸のさまざまな働き

グルタミン酸の働きとさまざまな疾患についての関係を見ていきましょう。

依存症

アルツハイマー病

  • マウスモデルを使った研究で、内因性カンナビノイドに似た化合物であるパルミトールエタノールアミド(PEA)を3か月間投与したところ、「認知障害が緩和され、神経炎症と酸化ストレスが抑制され、海馬内のグルタミン酸量増加を抑制した」。
  • 同様の研究で PEA は、グルタミン酸神経伝達のバランスを調整することによって学習、記憶、うつを改善した。
  • 運動障害(不随意運動)のあるラットにおいて、CB1 受容体を活性化するとドーパミンとグルタミン酸に変化が起こり、症状が改善された。

自閉症

うつ病

肥満と代謝異常

  • マウスにおいて、脳の主要な部分の CB1 受容体が活性化すると、食べ物の過剰摂取の原因となるグルタミン酸が産生された。
  • マウスにおいて、(摂食行動を司る)視床下部の CB1 受容体は、グルタミン酸作動性のインプットを介して摂取可能な食物とエネルギーのバランスに対する反応を起こした。

運動

ホルモン

多発性硬化症(MS

神経損傷

神経保護作用

統合失調症と精神疾患

発作

  • (体温の上昇によって起きる)熱性発作のあるマウスに CBD を投与すると、グルタミン酸および AMPA 受容体を通して発作が起きる可能性を低減させた。

最後に有害性について

  • 若いラットに THC を静脈注射したところ、前頭前皮質の CB1GABA およびグルタミン酸受容体が減少した。
  • ラットの胎児をカンナビノイドに暴露させると、グルタミン酸の放出不全によって記憶を司る海馬に問題が生じた。
  • 大麻喫煙量の多い十代の若者では、海馬内のグルタミン酸量が減じる可能性がある。ただし大麻が記憶力には良くないということはすでに広く知られていることであるが、PTSD の治療に効果がある(記憶を減少させる)のもそれが理由である。

さらなる臨床研究が必要であることは言うまでもありませんが、上記のような疾患や不安を抱えている人にとっては、グルタミン酸とエンドカンナビノイド・システムの力を活用して健康を増進させるのは比較的容易なことと言えるでしょう。



Lex Pelger は、向精神物質に関する記事やエンドカンナビノイド・システムに関するコミックの著者であり、カンナビノイドの科学に関する週刊ニュースレター Cannabinoids & the People を発行しているほか、CBD, PEA, THC, CBDA を使った重篤な疾患の治療についての個人指導を行っている。

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Revision date: 
7月 2, 2022

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