エンドカンナビノイド・システムと脳の関係

エンドカンナビノイド・システムと脳の関係

精神的な健康、認知力、感情その他、脳が司っている生体プロセスを調節しているのは、カンナビノイドに反応する受容体です。
精神的な健康、認知力、感情その他、脳が司っている生体プロセスを調節しているのは、カンナビノイドに反応する受容体です。

Project CBD ではしばしば、カンナビノイドと広い意味でのエンドカンナビノイド・システムが、どのようにして体内の恒常性(ホメオスタシス)を維持し、肉体的健康の維持に無数の貢献をしているか、ということについてお話ししています。でも、細胞受容体、リガンド(受容体に結合する化合物)、そして酵素で構成されるこの広大なシステムはまた、精神的な健康、認知力、感情その他、脳が直接的に司っている人体のプロセスにも影響を与えています。

カンナビノイド受容体・タイプ1(CB1)はおそらく、中枢神経系において、最も多く存在する Gタンパク質共役受容体(GPCR)です [1, 2]。広い意味での GPCR にはおよそ 750種類の受容体が含まれ [3] 、そのうち 150種類近くが、アメリカとヨーロッパで承認されている医薬品の3分の1以上の治療標的となっています [4]。

CB1 は、小脳、海馬を含む脳のいくつかの領域に非常に多数発現している他、それよりは少ないですが脳全体に分布していて [5, 6]、神経伝達物質の放出をはじめとする様々な機能を発揮しています [7]。CB1 を活性化させてさまざまな細胞応答を起こさせる作動薬の中でも重要なものの中には、内因性カンナビノイドであるアナンダミドと 2-AG、それに植物性カンナビノイドである THC が含まれます。

ですから、エンドカンナビノイド・システムの働きを増強させるさまざまな食べ物や活動と並んで、大麻が脳の機能に対して顕著なプラスの影響を与えるというのはもっともなことなのです。まだまだわかっていないことはたくさんありますが、近年発表された数々の論文によって、これまで以上にさまざまな恩恵があることが示唆されています。

吃音障害

吃音と呼ばれることもある speech dysfluency は、約 5% の子どもたちに起きる障害です。そのほとんどは、言語療法、認知行動療法、リラクセーション療法を含む標準的な治療によって改善します。ただし中にはそれが効かないケースもあるのです。『Cannabis and Cannabinoid Research』に 2021年 7月に掲載された症例報告 [8] は、どんな治療をしても効果のない吃音障害を抱える 20歳の男性が、大麻を使うことでようやく症状が改善されたというものです。

この論文の著者である、ポーランドのワルシャワ医科大学とドイツのハノーファー医科大学の研究者らによれば、患者は発話がなめらかになったばかりでなく、気分、注意力、集中力、睡眠、自信が改善され、さらに社会不安障害とストレスが軽減されました。副作用はなく、時間が経ってもその効果が薄れることはありませんでした。

認知症

ブラジルの研究者らが『Trends in Psychiatry and Psychotherapy』誌に発表したレビュー論文によれば、カンナビノイドはまた、認知症の神経精神症状の治療にも有効です [9, 10]。独自の臨床データを使った 15 の研究結果を分析を元に、この論文の著者らは、THCCBD、合成カンナビノイド医薬品ドロナビノールおよびナビロンの投与は、中程度から重度認知症患者に対し、概して望ましい治療結果をもたらした、と結論づけています。

中でも、興奮、攻撃的行動、睡眠障害、性的脱抑制に効果があるようでした。「市販の医療大麻製品について、その用量、治療期間、活性化合物の濃度(たとえば CBDTHC の割合)など、薬理学的な詳細の多くはまだ不明である」と論文は述べています。

ロックダウン

これとは別に、大麻が役立つかもしれない状況は、願わくば当分繰り返されないで欲しいものです — COVID 19 の流行による自宅待機で、人々が社会的に孤立する状況です。COVID-19 が最初に恐ろしい流行を見せたイタリア北部のパドゥア大学の研究チームは、『Frontiers in Psychiatry』に掲載された新しい論文 [11] の中で、エンドカンナビノイド・トーンを向上させることがわかっている行動が、ロックダウンといった緊急公衆衛生規制に従う人々が経験する心理的・肉体的な悪影響を最小限に抑える可能性があると提唱しています。

周囲からの孤立による影響とエンドカンナビノイド・システムの機能には関係があるという動物実験の結果に基づき、著者らは、プロバイオティクスや CBD の摂取、メディテーション、運動など、ECS を強化する形での「ライフスタイルへの介入」を行うことにより、ロックダウンや隔離といったストレスの強い状況に置かれた人が、恐怖感やネガティブな考えを持ったり攻撃的な行動に出ることが減る可能性があると示唆しています。こうした癒やし効果のある行為はまた、健康問題につながりかねないその他の生体反応をやわらげます。

マウスにおける社会的インタラクションと意欲

今年8月に発表された2つの研究は、ECS の活動が高まると、少なくともマウスにおいては、社会的インタラクションと意欲が改善されることを示しています。その一つは『Cannabis and Cannabinoid Research』に掲載された論文 [12] で、イタリアの研究者らが、「精神作用のない」、THC の含有量が少なく CBD を含む大麻 — つまりはヘンプですが — の抽出物を2週間にわたってマウスに与え、行動にどのような影響を与えるかを調べたものです。その結果、運動性や不安行動には変化は見られなかったものの、社会的インタラクションが増加したのです。

2つ目の論文は『Journal of Neuroscience』に掲載されたもの [13] で、ニューメキシコ州、ミネソタ州、メリーランド州の大学の研究者チームが、モノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)阻害薬を使ってマウスの体内の内因性カンナビノイド 2-AG の濃度を高め、それが目標探索に与える影響を測定したものです。結果は、MAGL を投与し続けると「目標探索を促進する」ことがわかりました。これは、「カンナビノイドによる内発的動機づけ障害の治療の可能性を裏付ける」ものです。

ストーナーが怠け者だなんて誰が言ったんでしょう。



Nate Seltenrich は、サンフランシスコのベイエリアに住む科学ジャーナリスト。環境問題、神経科学、薬理学を含む幅広いテーマについて執筆している。

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脚注

 

Revision date: 
9月 8, 2021

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