CBD規制の大失敗

CBD規制の大失敗

イギリスのお役人たちが、植物から採れたものを、合成食物原料を管理するための枠組みに押し込めようとした結果がこれです。
イギリスのお役人たちが、植物から採れたものを、合成食物原料を管理するための枠組みに押し込めようとした結果がこれです。

2022年のエイプリルフールは、イギリスの CBD 業界にとって特別な意味を持っていました。その日、何百という CBD 企業が、自分たちの製品は合法的に販売を続けられるのかどうか、1年間不安な思いで待っていた結論が出たのです。

CBD を「新規食品(ノベル・フード)」に分類する、という食品基準庁(Foods Standards Agency, FSA)の決定をきっかけに起きた一連の出来事によって、FSA正当性を確認した(validated)製品の最終的なリストが発表されるまで、多くの企業は先行きの見えない宙ぶらりんの状態に置かれました。

イギリスの CBD 業界にいるほとんどの人は、何らかの形で規制が行われるべきであるという点には同意していましたが、中には CBD をノベル・フードとして管理するという決定を否定した会社もいくつかありました。

ブレクジット以前のCBD業界

多くの国の規制当局が、CBD 製品の適切な製品区分の設定に苦労しています。イギリスでは、CBD は「境界製品」で、医薬品であると同時に食物でもあります。ただし、ほとんどの企業は高額の費用がかかる臨床試験を行って医薬品としての効能を証明することはできませんから、CBD 製品は主に栄養補助食品として販売されています。

これによってしばらくの間は、新たな産業が隆盛することになりました。飽和状態の市場に数千の製品がひしめき合い、競い合うこととなり、産業の盛況も行きすぎであると言う人もいました。イギリスには時代錯誤の法律があってイギリスの農家は栽培したヘンプの花穂を売ることが許されないため、ほとんどの CBD 製品はホワイトラベル製品、あるいは欧州または北米の業者から輸入したものでした。こうした障害はあったものの、ブレクジット以前の CBD 市場は急成長を続け、2019年には約3億ポンド [訳注:約 500億円] に達しました。

ところがその翌年、ブリュッセルに本拠を置く欧州食品安全機関(European Food Safety Authority, EFSA)が CBD をノベル・フードに区分しました。一部の人は、この決定によってその後起きたことがイギリスの CBD 業界に壊滅的な打撃を与えた、と言います。

ノベル・フードとは何か?

食品またはその原材料は、1997年以前に一般的に食べ物として消費されていなかった場合、「新規食品(ノベル・フード)」に分類されます。消費者向けに販売するためには、ノベル・フードは安全であることが証明されなければならず、承認申請には、製造工程、成分組成のデータ、仕様書、ノベル・フードが使われてきた歴史とその起源、利用の仕方と使用量、予想される摂取量に関する提案、吸収、体内分布、代謝、排泄、栄養組成、毒性、アレルギー誘発性に関する情報などが求められます。

ヘンプの花穂は何百年も前から食べ物として安全に使われてきた、と主張する業界の多くの人が激しく抗議したにもかかわらず、イギリスの食品基準庁は、CBD からの抽出物は「新規」食物であるとの EFSA の見解に同意しました。ただし、市場に参入する前に承認を得なければならない他のノベル・フードと違い、その時点ですでに、何千種類もの CBD 製品が一般消費者に販売されていました。そこで 食品基準庁は現行のノベル・フード承認プロセスに変更を加え、2020年 2月 13日以前に販売されていた CBD 製品については、販売を継続したければ、2021年 3月 31日までにノベル・フード申請が必要であると発表しました。

恣意的に定められたこの日付以降は、ノベル・フードとしての事前承認がなければ CBD 製品は市場に新規参入することができなくなったわけですが、承認には高額な費用がかかり、また手続きには何年もかかります。また、この新しい要件を満たすためには、2020年 2月 13日以前に販売されていた製品には成分配合の変更や商品名の変更も許されません。

この新しい規制は黎明期にあるイギリスの CBD 産業を抑圧しただけで、製造業者と卸売業者が最も大きな被害を受けている、と語るのは、イギリスで最も古く、成功している CBD ブランドの一つである Provacan を販売する、イスラエルとイギリスの合弁大麻企業 CiiTech の CEO であるクリフトン・フラックです。

「新しいホワイトラベルの顧客を持てなければビジネスはできません」——ノベル・フード承認のプロセスは初めから大失敗だった、と考えるフラックは言います。「発表の段階から大失敗ですよ。その後、承認手順がアップデートされたり、何か変更や進展があるたびにますますひどいことになっている。政府は最大のヘマをしたと思いますね」

つまり、規制当局のしたことは大失敗だったのです。

業界からの反撃

申請の期限が発表されてから数か月は、Provacan を含む多くの企業が現実に目を背け、これがなかったことになってくれるのを願う、という状態でした。

CBD 業界のさまざまな団体がそれぞれ異なった対応をとりました。イギリス最大手の製造企業 British Cannabis の他、Aurora、Columbia Care、GenCanna といったアメリカ・カナダの大手企業も会員であるカンナビノイド産業協会(Association for the Cannabinoid Industry, ACI)はこの展開を歓迎し、FSA と敵対するのではなく協力することを選びました。彼らはすぐに、申請が承認されるに十分な安全性のデータを提供するためには、高額な費用を必要とする、マウスまたはラットを使っての生体内毒性試験であることに気付き、会員が資金を出し合って共同で申請することにしました。

当初はノベル・フードという区分に反対していた欧州産業用ヘンプ協会(European Industrial Hemp Association)もまた、共同体として動くという方法をとり、170社の会員から 450万ドルを集めて、フルスペクトラム製品と CBD アイソレート製品の毒性試験を行いました。同時に、現在許されている基準以上の THC を食物として摂取しても安全であるということを証明しようと、400人を対象とした THC の毒性試験も行いました。

誰も触れたがらないTHC

人々の関心が CBD に集まる中、今までのところ、イギリスで販売されている CBD 製品のうちおよそ3分の1にはごく少量の THC(0.2% 未満)やマイナーカンナビノイドが含まれている、ということは忘れられがちです。

知ってか知らずか、販売されているこうしたフルスペクトラム製品の多くは、イギリス内務省が法的に許容している、一製品に付き 1mg、という量を超える THC を含有しています。

ノベル・フード承認が義務付けられる以前は、これは問題ではありませんでした。ところが、ノベル・フードとして承認されるためには、合法とされる以上の規制物質を含んでいるわけにはいきません。多くの業者にとってこれは明らかに、フルスペクトラム CBD という選択肢の未来を予兆させるできごとでした。

一方、薬物乱用諮問委員会(Advisory Council on the Misuse of Drugs)もまたイギリス政府に対し、CBD 製品の使用一回分には 50 マイクログラム以上の THC が含まれていてはいけない、という独自の提言を行いました。でも、諮問委員会の提案は完全に実施が不可能です。第一に、CBD 製品の一回分というのが実際にどれくらいの量であるかは誰にも確実なことが言えません。この提言が採用されれば、おそらくフルスペクトラム CBD 製品は以後売れなくなり、アイソレート、ディスティレート、そして合成 CBD 中心に向かいつつある現在の傾向に拍車がかかるでしょう。

混乱は続く

エイプリルフールに話を戻しましょう。人々はハラハラしながら、正当性が認められて合法的に販売を続けることが許された CBD 製品のリストを食品基準庁が発表するのを見守っていました。

それまでの数か月間に、900通を超えていた申請書は 182通にふるい落とされ、4月1日の朝になると、70通の申請者の 3,536 製品が正式に承認されました。(意外にも、承認された製品には少数のフルスペクトラム製品が含まれていました。)ただしこれは条件付きでした。承認された製品のほとんどは暫定承認であり、正式承認のために、毒物試験からの適切なデータを含むさらなるエビデンスを待っていたのです。

食品基準庁はすぐさま、このリストにない製品でまだ販売されているものは回収し、オンライン販売を中止するよう強調しました。ACI は自身のウェブサイトを立ち上げ、この決定を遵守していない CBD 製品を通報するよう消費者に呼びかけることさえ行いました。食品基準庁のリストに載らなかったことで名前を挙げられ、面目を潰された企業も多々ありました。

そうした企業の一つ、CBDfx は、自分たちの製品がリストにないのは食品基準庁の事務処理にエラーがあったためであることを発見しました。これは CBDfx の他にも 700種の CBD 製品に当てはまる状況でした。CBDfx の代表取締役である Carlo Buckley は LinkedIn 上で、食品基準庁のエラーが発見されてからようやく CBDfx の製品が承認リストに加えられるまでには 17日かかった、と暴露しています。この遅延で CBDfx 社は、小売店の一つが食品基準庁の指示に従って一時的に製品の販売を中止し、莫大な損失が生じました。

誰が勝ち、誰が負けたのか

4月 27日になると、最終リストだったはずのものは、6,000製品近くまで膨れ上がりました。最終的なアップデートは 6月 30日に予定されています。

自分たちのブランドが認可製品のリストに含まれていた、という元気の良いプレスリリースが次々に発表されましたが、多くの製品にとって、リストに載っていることは一時的な措置でしかありません。正当性の認可(validation)は必ずしも最終的な承認(authorization)を保証するものではないのです。最終的な決定が下るのは、2023年も半ばになってからのことです。

現時点では Provacan もリストに載りましたが、フラックは、現実的に考えて自社のフルスペクトラム CBD 製品ラインはいつかこのリストから外れるだろうと考えています。リスクを回避するため、Provacan をはじめとする多くのブランドが、「ノベル・フード規格」の CBD アイソレート製品ラインを、2月 13日という仕分け期限ギリギリに発売しています。

この一連のプロセスの恩恵を蒙るのはいったい誰なのか、と問わずにはいられません。食品基準庁のリストに載った製品の 69% を占めるとされる ACI の会員企業でしょうか? それとも、「積極的な拡大計画」を持ち、自分たちの合成 CBD 製品の毒性試験に 150万ポンドを費やせる会社でしょうか?

そして負けたのは誰でしょう? それなしではいられなくなったフルスペクトラム CBD 製品を合法的に入手できなくなる消費者です。そうした人たちの多くは闇市場に回るでしょう——それを意図したのではないとしても、植物からの自然な抽出物を、合成食物原料管理の枠組みに嵌めようとした結果、そうなる可能性が高いと言えるのです。



イギリス在住のメアリー・バイルズ(Mary Biles)は、ジャーナリストであり、エデュケーターであり、Project CBD の寄稿者で、著書に『The CBD Book』(Harper Collins, UK)がある。

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Revision date: 
6月 10, 2022

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