CBD・ 医療大麻と
子宮内膜症

CBD・ 医療大麻と
子宮内膜症

子宮内膜症の原因はエンドカンナビノイド欠乏症でしょうか? 医療大麻は子宮内膜症に効くのでしょうか?
子宮内膜症の原因はエンドカンナビノイド欠乏症でしょうか? 医療大麻は子宮内膜症に効くのでしょうか?

子宮内膜症は、子宮内膜に似た細胞が子宮外で増殖する疾患で、再生産年齢の女性の 10人に1人が罹患しています。これはなんと、世界的に見ると 1 億 7,600 万人です [1]。

その理由はまだ完全にはわかっていませんが、子宮内膜組織が子宮外で増殖し始め、卵管、卵巣、膀胱、腸など、子宮周辺の骨盤内器官の周囲に集積します。問題は、月経周期による出血があるたびに子宮内膜組織も出血する、ということです。ただし、子宮内膜組織からの出血は体外への出口がどこにもなく、それが痛みや炎症、ときには瘢痕組織形成の原因となるのです。

子宮内膜症の女性の全員が強烈な痛みを味わったり生理が重かったりするわけではありませんが、比較的軽症の場合でも、子宮内膜症は治療しなければ不妊につながりかねません。

「女のさだめ」

29歳のイギリス人女性で『The Endo Monologues』の著者であるローラは、14歳のときに自分の生理が友だちよりも重いことに気づきました。「生理に問題がある」成人女性や少女の多くがそうであるように、ローラには薬が処方され、最初のうちは効果がありました。

「十代の終わりから二十代の初めにかけて、痛みはひどくなっていきました」とローラ。「学校を休み、大学の講義も休むようになりました。まるで、熱いナイフが骨盤の周囲や背中を刺し貫いているような痛みだったわ」

子宮内膜症患者のほとんどがそうなのですが、その痛みは月経前後に特にひどくなりました。「ベッドから起き上がれなかったわ。ピルを摂るとその日数が短縮されたけれど、トイレに行くのも痛いし、歩くのも、眠るのも痛くて、セックスもできなかったし、耐えられないほどになっていったの」

長い間、ローラの痛みは誰にも相手にされませんでした。それは、医薬品の研究、そして医学そのものが全般的に、性差別を伴っていることの表れです [2]。

疼痛に対し、女性は男性に比べて、鎮痛薬ではなく鎮静剤を処方されることが多いということが報告されています。これはおそらく、女性の健康とヒステリーには関係があるという、古代ギリシャに遡る誤った考え方に端を発しているのでしょう [3]。ローラにもまさにそのとおりのことが起きました。

「私は、自分は単に大げさに騒ぎすぎていて、みんなの注目が欲しいから誇張しているのかもしれない、これは私の妄想だ、と思い込まされそうになりました。みんなに『まあね、ただの生理だろう、そういうものだよ』と言われたんです。ほとんど無視されたわ」

しつこい細胞

ローラは医師から、不特定多数との性交が原因だという非難さえ受け、性感染症クリニックに送られた挙げ句にようやくその症状を真剣に受け止めてもらうことができました。腹腔鏡検査の結果、卵巣、子宮、膀胱、腸、ダグラス窩がステージ4の子宮内膜症であることがわかったのです。その後、散在する子宮内膜組織は手術で切除されました。

でも、子宮内膜細胞は強粘着性でしつこく、手術をしても痛みがなくなるのは一時的です。子宮内膜組織は必ずと言っていいほど、おなじみの激しい痛みとともに再発するのです。非ステロイド抗炎症薬やパラセタモールといった市販の鎮痛薬の他、標準的な治療法にはプロゲステロンを含む経口避妊薬や避妊リングなどがあり、一部の患者では子宮内膜症の発症を防ぐのに効果があります。(逆にエストロゲンは子宮内膜組織の増殖と拡散を助長します。)

耐えられないほどの痛みに苦しむ患者は今でも多く、呼吸法、ヨガ、ストレッチ、それに医療大麻や CBD オイルがセルフケアの方法としてよく用いられます。オーストラリアでオンラインで行われた調査では、子宮内膜症のサポートグループの女性たちにインタビューした結果、子宮内膜症の痛みに対するさまざまなセルフケアの手法の中で、大麻と CBD オイルが最も効果的であることがわかりました [4]。

ローラの場合、CBD は症状を抑えるのに画期的な効果がありました。子宮内膜症患者のオンライン・フォーラムで見つけた情報をもとに、ローラは CBD 入りの潤滑剤を使ったり、CBD をべーピングしたり、CBD ティンクチャーを摂り始めたのです。

「一瓶摂り終わったときは、大して効果を感じなかったの。でもそれから1週間 CBD を摂らずにいたら、すごく痛くなったのよ。それで思ったの — これは摂り続けなきゃ、って。急にすごく痛くなったらベイプを使うし、毎日 CBD オイルを摂っているおかげで、もう1年近く市販の鎮痛薬は使っていません。CBD を切らしてしまってものすごく痛くてベッドから出られなかったり、動けないから仕事を早退しなければならなかったことも何度かあるわ。だから今は本当に毎日きちんと摂るようにしているの。痛みの程度も全然違うし、精神的にも楽になったわ。とにかく、摂っていると体調が良いのよ」

子宮内膜症とエンドカンナビノイド欠乏症

医療大麻は、世界中で子宮内膜症に苦しむ何万、ひょっとしたら何百万人もの女性を苦痛から解放していますが、その医療効果は、単なる鎮痛作用だけでなく、子宮内膜細胞が体内に拡散するのを抑えることができる可能性もあります。

子宮内膜細胞はがんに似ているところがあり、なかなか死のうとはせず人体内の他の場所に転移します。人体にもともと備わっている制御システムであるエンドカンナビノイド・システムが最適な状態で機能していれば、アポトーシス(自然な細胞死)を引き起こして、望ましくない細胞の増殖を防げるはずです。ところが子宮内膜細胞の場合、どういうわけか細胞は死なずにはびこるのです。

これがなぜ、どのようにして起きるのか、医学者たちも完全には理解していません。大麻に症状を緩和する効果があるということは豊富な事例証拠が裏付けていますが、その分子レベルのメカニズムが解明されるのはまだこれからです。

子宮内膜症の発症は、エンドカンナビノイド欠乏症がその一因なのでしょうか? Project CBD はこれについて、最初に「エンドカンナビノイド欠乏症」という概念を提唱したイーサン・ルッソ博士に直接訊いてみました。ルッソ博士は現在、医療、診断、産業に利用できるカンナビノイド関連の革新的な製品の開発と販売を行う CReDO Science という会社のディレクターです。

ルッソ博士は、子宮内膜症において過剰に活発な細胞の増殖に歯止めがかからない原因は、カンナビノイド受容体(CB1CB2)の機能不全かもしれないと言います。「子宮内膜症の患部は、対照群と比較して、CB1CB2 受容体がどちらも少ないのです」

THCと細胞死

子宮内膜細胞には内因性カンナビノイドが結合できる CB1 および CB2 受容体が少ないということから、自然に起きるアポトーシスが阻害されて、異常な細胞の増殖と拡散につながるのではないかと推測できます。基礎研究では、内因性であれ、植物性であれ、合成であれ、この2つの受容体に作用するカンナビノイドが子宮内膜炎の発症に影響しているようです。

ルッソ博士はこう言っています。「2017年に、CB1 および CB2 受容体の両方を活性化する薬品が、子宮内膜組織の拡散と増殖を減少させ、アポトーシスと呼ばれる細胞の破壊を促進することを示した論文 [5] がありました。細胞破壊と言うと悪い事のように聞こえますが、これは正常な、計画された細胞死です。正常な細胞ではこれが起こるべきなんですが、がんや子宮内膜組織など、異常増殖した腫瘍の細胞ではこれが起こりません。このことを知れば、THC(テトラヒドロカンナビノール)や、もしかしたらその他の大麻成分が子宮内膜症の症状を緩和させるのに役立ち、病理学的課程そのものにも影響する理由がわかると思います」

子宮内膜炎のマウスモデルに THC が及ぼす影響を調べた最近の論文 [6] では、THC は疼痛スコアを低下させたのみならず、子宮内膜囊胞の形成も低減させました。

でもルッソ博士は、子宮内膜細胞の拡散を制限するのは THC による CB1 および CB2 受容体の活性化だけではないと考えています。カノニカル・エンドカンナビノイド・システム以外の受容体もまた、子宮内膜炎の症状と進行を抑える可能性があるのです。

CBDの鎮痛作用

子宮内膜症患者のフォーラムには、CBD オイルで痛みが楽になったという患者からの報告が溢れています。これは CBD が、子宮内膜症の患者では過剰に発現することがある TRPV1 バニロイド受容体を活性化するせいかもしれません。TRPV1 受容体はリガンド依存性イオンチャンネルで、一般的に、活性化されると疼痛を引き起こします。

ルッソ博士によれば、「CBDTRPV1 を刺激し、その感受性を鈍らせます。つまり、TRPV1 を少しだけ刺激すると、TRPV1 はもうそれ以上反応しなくなるわけです。ですからこれは疼痛を治療する一つの方法です」。実は、ホットパッドが気持ちいいのは、熱に敏感な TRPV1 受容体が少しだけ活性化された結果、TRPV1 の感受性が鈍って鎮痛作用が起きるからなのです [8]。

ルッソ博士はまた、子宮内膜症と関係があるかもしれない「GPR18」という別の受容体についても指摘しています。GPR18 は、エンドカンナビノイド・システムにも作用するいくつかの内因性脂質神経伝達物質によって活性化されます。たとえば GPR18 は、内因性カンナビノイドであるアナンダミドが FAAH 酵素によって分解されてできる化合物、N-アラキドノイルグリシン(NAGly)と結合することが知られています。CBD は、FAAH の働きを阻害することによって、アナンダミドが GPR18 の刺激物質である NAGly その他の代謝産物に分解されるのを遅らせます。

ルッソ博士は言います。「GPR18 が刺激されると細胞移動を助長します。ですから、たとえばがんの場合、GPR18 を刺激するものがあると転移が起きやすくなるのです。実は、しばらく前のことですが、CBDGPR18 受容体の拮抗薬であることがわかっています。ですから、子宮内膜組織が異常に増え広がるのを防ぐのに役立つはずなのです」[9]

ただし、カンナビノイドに関する基礎研究が往々にしてそうであるように、わかっていることよりもわからないことの方が多く、一見明らかに見えることも実はそうとは限りません。受容体をオンとオフの電源スイッチのように扱う研究では、相矛盾する結果が得られることも珍しくありません。THC とアナンダミドはともに、基礎実験では GPR18 受容体を活性化し、GPR18 が活性化されると子宮内膜細胞の転移を促します — 子宮内膜症患者にとっては、これは望ましい治療効果ではありません[10]。

インディアナ大学のヘザー・ブラッドショー(Heather Bradshaw)博士のチームが行った研究は、エンドカンナビノイド・システムの失調、具体的にはアナンダミドの代謝異常が、子宮内膜症の原因として重要な要因であることを示唆しています。CBD に子宮内膜細胞の転移を止める力があるということは現段階では推論にすぎませんが、鎮痛薬としての CBD の効果は、すでに多くの子宮内膜症の女性たちが実感しています。

アイソレートではなく、大麻草全草を

ここまで個別のカンナビノイドとその作用機序についてお話ししてきましたから、子宮内膜症の治療には大麻草全草の出る幕はないと思われるかもしれません。

アントラージュ効果の熱心な擁護者であるルッソ博士は、子宮内膜症をはじめとするさまざまな疾患の治療には、大麻草全草を使った薬が重要であると強く主張します [11]。「大麻草には、正しく組み合わせて製剤化すれば、子宮内膜症の症状や痛み、それに病気の進行そのものに効くたくさんの成分がある」と博士は言います。

「これは複雑な問題なのです。昨今は、子宮内膜症、がん、糖尿病などの問題が一つの化学物質で解決できることは稀です。従来の薬理学には、ターゲットを絞ってそこだけを特定して対処するという傾向があります。でもそれは全体像を無視することになるかねません。つまり、ある一つの分子が特定のターゲットを治療することで、関連するさまざまな症状の症候群全体に奏効するということはめったにないわけです」

「そこで私はみなさんに思い出していただきたいんです。人類の歴史を通じて、植物は薬でした。人間は新しい化学物質、つまり医薬品を開発しましたが、その多くは、直接的あるいは間接的に、植物由来の物質に関係があります。そして、そうした植物由来の物質は往々にして、医薬品と同等かそれ以上の効果があるばかりでなく、一般的に言って、人体が認識できないあるいはうまく代謝できない化学合成された分子よりも副作用が少ないのです。化学合成された分子はさまざまな毒性を伴う傾向がありますからね」

子宮内膜症に関する臨床試験

これも、科学的な研究において女性の健康がないがしろにされていることを示す一例なのかもしれませんが、これまで、子宮内膜症の女性に対する医療大麻の効果を検証した臨床試験は行われていません。

臨床試験に一番近いものは、子宮内膜症に伴う慢性の骨盤痛に対して、内因性脂質神経伝達物質でありアナンダミドと近い関係にある、N-パルミトイルエタノールアミンPEA)と trans-ポリダチン(レスベラトールの天然の前駆体)が治療効果を発揮するかどうかを調べた無作為化プラセボ比較試験です [12]。PEA とポリダチンによる治療は、生理痛、性交痛、全体としての骨盤痛の軽減には偽薬よりも効果があったものの、試験で比較された非ステロイド抗炎症薬ほどの効果はないという結果でした。

植物性カンナビノイドを使った2つの臨床試験も始まろうとしています。スペインで行われるオープンラベルの第2相試験 [13] では、THCCBD が 1:1 の比率で、子宮内膜症患者の痛覚過敏症の緩和のために投与されます。これとは別の第3相二重盲検プラセボ比較試験 [14]では、子宮内膜症の痛みを緩和させるため、一種のホルモン治療薬である酢酸ノルエチンドロンと同時に、10ミリグラムまたは 20ミリグラムの CBD が投与される予定です。

でも、十分なエビデンスが蓄積され、カンナビノイドが子宮内膜症の症状を軽減させるのに有効であると医師らが納得するまでには、まだ何年もかかるでしょう。それまでの間、世界中の女性たちが子宮内膜症の痛みを緩和させるためのセルフケアの方法の一つとして、医療大麻が欠かせない役割を果たしていくのは間違いありません。

エンドカンナビノイド欠乏症に関するイーサン・ルッソ博士のインタビューの全編を、Cannabis Voices で聴くことができます。


イギリス在住のメアリー・バイルズ(Mary Biles)は、ジャーナリストであり、エデュケーターであり、Project CBD の寄稿者で、著書に『The CBD Book』(Harper Collins, UK)がある。

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参照文献:

  1. Peter A W Rogers et al, Priorities for endometriosis research: recommendations from an international consensus workshop. Reprod Sci 2009 Apr;16(4):335-46.
  2. Laura Kiesel, Women and pain: Disparities in experience and treatment. Harvard Health Publishing. October 09, 2017.
  3. Gabrielle Jackson, Pain and Prejudice: A Call to Arms for Women and Their Bodies.
  4. Mike Armour et al, Self-management strategies amongst Australian women with endometriosis: a national online survey. BMC Complementary and Alternative Medicine Volume 19, Article number: 17 (2019).
  5. Elif Bilgic et al, Endocannabinoids modulate apoptosis in endometriosis and adenomyosis. Acta Histochem 2017 Jun;119(5):523-532
  6. Alejandra Escudero-Lara et al, Disease-modifying effects of natural Δ9-tetrahydrocannabinol in endometriosis-associated pain. eLife. 2020
  7. Bohonyi N et al. Local upregulation of transient receptor potential ankyrin 1 and transient receptor potential vanilloid 1 ion channels in rectosigmoid deep infiltrating endometriosis. Mol Pain. 2017;13:1744806917705564.
  8. Alok Jha, Heat ‘relieves internal pain.’ The Guardian. 5 July 2006.
  9. Pertwee, Handbook of Cannabis, Oxford University Press.
  10. McHugh, Douglas et al. Δ(9) -Tetrahydrocannabinol and N-arachidonyl glycine are full agonists at GPR18 receptors and induce migration in human endometrial HEC-1B cells. British journal of pharmacology vol. 165,8 (2012): 2414-24.
  11. Russo EB. Taming THC: potential cannabis synergy and phytocannabinoid-terpenoid entourage effects. Br J Pharmacol. 2011;163(7):1344-1364
  12. Luigi Cobellis et al, Effectiveness of the association micronized N-Palmitoylethanolamine (PEA)-transpolydatin in the treatment of chronic pelvic pain related to endometriosis after laparoscopic assessment: a pilot study. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol 2011 Sep;158(1):82-6.
  13. Effect of Cannabinoid (THC / CBD 50%) on Hyperalgesia in Patients With Deep Endometriosis (EdomTHC). ClinicalTrials.gov.
  14. Cannabidiol and Management of Endometriosis Pain. ClinicalTrials.gov.

 

Revision date: 
10月 16, 2020

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