大麻オイルと
ヘンプオイル

大麻オイルと
ヘンプオイル

法規制が変化し続けるなか、ヘンプとそれ以外の大麻草を区別することは急速に無意味になりつつあります。

By Martin A. Lee

植物の世界では、大まかに言うと2種類の大麻草があります。「ヘンプ」と呼ばれるものと、薬物としての大麻草です。産業用ヘンプには、繊維を採るために栽培されるものとヘンプシードオイルを採るために栽培されるものがあります。薬物としての大麻草には、陶酔作用のあるTHCを豊富に含むものと、陶酔作用のないCBDを多く含むものがあります。

ヘンプと大麻の一番大きな違いは、含まれる樹脂の量です。産業用ヘンプは樹脂が少なく、薬物としての大麻草には樹脂が多く含まれます。「マリファナ」というのは、この樹脂を多く含むカンナビスの呼び名の一つです。

産業用ヘンプは通常、そのために育種された種から栽培され、1平方メートルの土地に、多ければ100本もの、背が高くてヒョロヒョロの、竹のような、葉の少ないヘンプが育ちます。こうしたヘンプは機械を使って収穫され、紙、布、食用オイルなどさまざまな製品に加工されます。

一方大麻草は通常、無性生殖で、クローンから栽培されることが多く、1平方メートルあたりに育つのは1本か2本です。花穂は手で収穫され、乾燥され、トリミングと、保存に良い状態にする作業(キュアリング)が行われます。その後、陶酔感、あるいは医療効果を求めて摂取されます。

すべては樹脂から

アメリカ連邦法ではもともと、マリファナを含有樹脂の量によって定義していました。1970年に規制物質法(CSA)に記載された「マリファナ」を定義する2文には、樹脂という言葉が3度も使われています。これは、1937年に制定され、事実上の大麻禁止令となったマリファナ課税法の定義を一語一句違わず繰り返したものです。

「マリファナ」とは、成長しているいないにかかわらず、植物 Cannabis sative L.、またその種子、いずれの部位からであろうともマリファナから抽出された樹脂、すべての化合物、加工製品、ソルト、派生物、混合物、マリファナとその種子あるいは樹脂から作られた製剤を指す。Cannabis sative L. の成熟した茎、成熟した茎から作られた繊維、種子から作られたオイルや固形物、成熟した茎に含まれるすべての化合物、加工製品、ソルト、派生物、混合物、製剤(成熟した茎から抽出された樹脂は除く)、繊維、オイルや固形物、殺菌されて発芽できない種子はマリファナには含まれない。

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つまり、基本的には、規制物質法は大麻草の特定の部位(「成熟した茎」と「殺菌された種子」)はマリファナの法的な定義からは除外しているのです。ただし、花穂、葉、ネバネバした樹脂は、この例外に含まれませんでした。樹脂とそこから派生するものについては、それが大麻草のどの部分から採れたものであっても明白に禁じられているのです。

規制物質法は、この点についてははっきりしています。大麻草のいかなる部分から採れたものでも、樹脂、および樹脂から作られたものは違法なのです。ヘンプの茎から作られる繊維と発芽防止処理を施した種子から搾られる油は規制対象から除外されましたが、樹脂は除外されませんでした。

けれども、医療大麻と嗜好大麻に関して言うならば、その効果を発揮するのは樹脂です。大麻草の樹脂は、小さなマッシュルームのような形をしたトリコームの先端の膨らみの中に含まれています。トリコームは主に、良い匂いのする雌株の花穂(バッズ)と、それよりも量は少ないですが葉にあります。このネバネバした樹脂の中には、THC(テトラヒドロカンナビノール)とCBD(カンナビジオール)、その他何百種類もの植物代謝産物(主に、他のカンナビノイドとテルペン)が含まれています。そしてこれらが、人間の脳内の化学成分を補完し、肉体的・精神的な問題を軽減するのです。

注意していただきたいのは、ヘンプシードオイルは、大麻草の花穂や葉から抽出されたCBDを豊富に含むオイルとは別のものであるということです。ヘンプの種子から搾られるオイルには、CBDも、THCも、どんな植物性カンナビノイドも含まれませんが、ニス、塗料、石けん、タンパク質を補強した補助食品、その他さまざまに利用できます。

ごく微量な THC

連邦政府は初めから、マリファナと産業用ヘンプを分ける最も重要な要因は樹脂の含有量であることを知っていました。現在は、連邦法には新しく加えられた注意書きがあり、それによれば産業用ヘンプとは乾燥重量でTHCの含有量が0.3%を超えないものと正式に定義されています。含有されるTHCの量がそれほど微量ならば、陶酔作用は起こらないからです。

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この 0.3% という数字はどこから来たのでしょうか? その始まりは、1976年にカナダの植物学者 Ernest Small と Arthur Cronquist が発表した分類学的報告書にあります。彼らは決してこの、THC 0.3% という数字を、ヘンプとそれ以外の大麻草を法的に区別するための基準として意図したわけではありませんでした。

ところがまさに、その通りのことが起きました。現在の連邦法によれば、葉や花穂を含めて、大麻草のいずれの部位においても含有するTHCの量が「乾燥重量で0.3%を超えない」ものは、大麻ではなくヘンプとされます。THC含有量が0.3%を超えるものは大麻であり、したがって連邦法上は、栽培することが禁じられています。

2014年の農業法(ファームビルとも呼ばれます)改正によって、アメリカ史上初めて「産業用ヘンプ」が定義され、大麻と法的に区別されました。この「THCが0.3%以下」というヘンプの条件は、2014年農業法の第7606項に明文化され、連邦議会が2018年農業法を承認した際にも更新されました。

皮肉屋は「大麻を非合法のままにしておくための法律」と呼ぶ2018年農業法には、樹脂については言及されていません。はっきり言えば、このTHC 0.3%以下という法的な上限は恣意的なものであり、観念的な、リーファーマッドネス時代の陶酔感恐怖症を引きずる時代の遺物でしかありません。科学的根拠がないにもかかわらず、この決まりごとは大麻禁止政策を存続させるための一番新手の切り札になっています。大麻の禁止は、真実性を欠いた時代錯誤の政策であり、医学的な発見を阻み、さまざまな割合でCBDとTHCが組み合わさった大麻草の抽出物を含む、貴重な治療法を患者から奪っているのです。

CBDの原料

不十分な点はありますが、この農業法は大きな前進でした。これによってアメリカの農家は、アメリカ国内で、ヘンプを商業作物として合法的に栽培することができるようになったのです。遅まきながら、市場における巨大なCBD需要がもたらした変化でした。

農業法が成立したその日(2018年12月20日)、大麻は規制物質のままですが、ヘンプは規制物質のリストから除外されました。農業法はまた、ヘンプ由来のCBDを含むヘンプ製品を規制物質法の規制対象からはっきりと除外しました。ただし、それらが食品医薬品局(FDA)の管轄下であることは変わっておらず、FDAは、ヘンプ由来のCBDは合法的な補助食品ではなく、適応外処方が許された医薬品でもない、という立場を取っています。

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一方、THCを0.3%より多く含む大麻草から抽出されたCBDオイルは今でも、連邦法によればスケジュールIの規制物質です。大麻草由来の非合法のCBDオイルと、非合法ではないヘンプ由来のCBDオイルに含まれるCBDは、どちらも化学分子的には同一なのですから、規制当局がこの二つをどうやって見分けるのかは明らかではありません。

CBDオイルの原料として最も良いのは、オーガニック栽培された、樹脂を多く含みCBDが豊富な大麻草であって、樹脂の少ない産業用ヘンプではありません。何故かと言えば、含まれる樹脂が多ければ多いほど、抽出できるCBDも多いからです。繊維や種子を採ることを目的に栽培される、樹脂の少ない産業用ヘンプは、いくつかの理由から、CBDの原料として最適であるとは言えません。

  • 一般に、産業用ヘンプは、高樹脂・高CBDの大麻草と比べてCBD含有量がはるかに少なく、そのため少量のCBDオイルを抽出するために大量の産業用ヘンプ原料が必要です。ヘンプはバイオアキュムレーター、つまり土中の有害物を吸い上げる性質がある植物です。ファイトレメディエーション(植物を利用して環境を浄化すること)が目的であればこれは素晴らしいことですが、経口摂取できる医療用のオイル製品を作るという観点から見れば話は違います。ヘンプや大麻草から抽出されるオイルには、有効成分と同時に有害物質が濃縮されてしまうからです。
  • CBDオイルは、別の目的のために栽培された産業用ヘンプの副産物であることが多々あります。ヘンプ農家は、残り物からCBDを抽出したがっている企業に自分が使わなかったヘンプ原料を売れば、収入になるからです。このようなヘンプの二重用途は非常に多く、ほとんど規制されていません。そして産業用ヘンプは、残留農薬や土中の有害物で汚染されていることが多いのです。
  • 産業用ヘンプから抽出され、高度に精製されたCBDペーストやCBDアイソレートは、CBDリッチなオイル製品の調合のために希釈が必要で、優れた原料とは言えません
  • 豊富な樹脂を含む大麻草と比べ、樹脂をあまり含まないヘンプは害虫やカビに対して無防備です。何故なら樹脂には、害虫を寄せ付けず、益虫を引き寄せ、胴枯病から植物を護るカンナビノイドやテルペンが含まれているからです。
  • 産業用ヘンプは、樹脂の多い大麻草と比べ、含有する化合物が多様性に乏しく、大麻草のように、医療効果を持つさまざまなマイナー・カンナビノイドやテルペンが豊かに混ざり合っているわけではありません。これらの化合物は、CBDやTHCと相互に作用して、医療効果を高めます。

大麻かヘンプか、の先にあるもの

2018年の農業法が成立する前は、アメリカで手に入るCBD製品と言えば、ヨーロッパや中国から輸入された、低樹脂の産業用ヘンプ由来のものがほとんどでした。アメリカ国内でのヘンプ栽培が再び合法となった今、コロラド州、ケンタッキー州、オレゴン州、モンタナ州、バーモント州をはじめ、国内栽培されたヘンプから作られた、より品質の良いCBD製品が入手しやすくなっているはずです。

CBDの原料として最も優れているのは、高樹脂・高CBDの大麻草で、CBDが約20%、THCが1%程度含まれています。樹脂をたっぷり含むこの花穂を喫煙しても、CBDにはTHCと違って陶酔作用がないのでハイにはなりません。ところが残念ながら現在の法律では、これはTHCが多すぎてヘンプとは呼べません。けれどもこれは、疼痛、不安神経症、うつ病などに苦しんでいる人には大いに役立つのです。

大麻草は非常に適応力のある植物です。法的な規制がどうあれ、大麻草は多種多様な自然環境下で育ちます。人間の手による操作にも良く反応し、その遺伝的素質は他に類を見ないほどに拡大しています。

法規制が変化し続けるなか、ヘンプとそれ以外の大麻草を区別することは急速に無意味になりつつあります。アメリカの育種家は、農業法が定める、乾燥重量で「THCが0.3%以下」の条件を満たし、かつ10%以上のCBDを含む品種を作ることに成功しているのです。

言い換えれば、ヘンプ栽培農家は現在、高樹脂カンナビス(マリファナ)だけれどもTHC含有量が0.3%以下のものを育てているということです。これを聞いてもよく分からなくても当然です——実際にややこしい話なのですから。ですが、こうした高CBDのカンナビスを上手に栽培し、そこからCBDを抽出・加工すれば、医療用に、あるいは個人の楽しみのために使うCBDオイルの良い原料となる、ということだけは確かなのです。


Martin A. Lee は Project CBD のディレクターであり、『Smoke Signals: A Social History of Marijuana – Medical, Recreational and Scientificの著者。



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