自閉症と希少カンナビノイドとエンドカンナビノイド・システム

自閉症と希少カンナビノイドとエンドカンナビノイド・システム

大麻の科学の最前線より
大麻の科学の最前線より

エンドカンナビノイド・システムとの関係が研究されている精神疾患は色々ありますが、その中で最も興味深いものの一つが自閉症スペクトラム障害かもしれません。CBD をはじめとするカンナビノイドによる自閉症の症状の治療については長年にわたって研究が行われており、エンドカンナビノイド・システムが持つさまざまな働きと自閉症との間にある関係が精査されています。

これは比較的新しい研究分野ではありますが、いくつかの重要な点がすでに明らかになっています。2021年 5月に発表されたレビュー論文は、「大麻とカンナビノイドは自閉症スペクトラム障害に伴う症状の治療に有望であり、こうした症状の緩和のための代替療法として使用できる可能性がある」と結論しています。

その1か月後に『Autism Research』誌に掲載された論文には、CB1 カンナビノイド受容体が欠落しているオスとメスのマウスについて、自閉症スペクトラム障害(ASD)において最も重要な、社会行動とコミュニケーションという二つの側面を分析した実験について書かれています。遺伝子に手を加えられたこれらのマウスは、正常な対照群のマウスとは鳴き方も行動も異なっていました。

「この実験の結果は、受容体がなくなったことで、成長期においても成体となってからも、社会行動とコミュニケーションにいくつもの変化が起きることを示しており、エンドカンナビノイド・システムが ASD 特有の行動分野に関係していることを裏付けている」と論文は結論しています。

CBDV: 神経学的機能の正常化

自閉症と大麻またはカンナビノイドの関係については、今年になって二十数本あまりの論文が発表されています。7月には『Molecular Autism』誌が、CBDのプロピル類似体であるカンナビジバリン(CBDV)に、線条体の機能的結合を調整し「神経学的機能の正常化」に向かわせる働きがることを示すエビデンスを掲載しました。

線条体というのは、成長の過程において中心的な役割を果たす大脳基底核の一部です。この論文と著者が一部重なるイギリスとアメリカの研究チームは以前の研究で、CBDCBDV はどちらも、自閉症スペクトラム障害のある人とない人では大脳基底核の機能に対して異なった作用を与えることを明らかにしています。

新しい論文は、この関連を機能的結合にまで拡大しています。機能的結合とは、機能的磁気共鳴画像(fMRI)によって評価可能な脳活動の相互関係の強さのことです。線条体に異常な機能的結合があると、さまざまな自閉症スペクトラム障害の症状の原因となることがある、と著者らは説明しています。

今後の研究で、線条体の機能的結合を調節することが症状の有意な変化に結びつくかどうかが明らかになれば、科学と現実の世界をもう一歩近づけることができるかもしれません。

CBDと膀胱がん

いわゆる「マイナー(希少)」なカンナビノイドと言えば、『Molecules』誌に最近掲載された論文は、多くの大麻品種に少量含まれる興味深い植物性カンナビノイド、カンナビクロメン(CBC)が医療効果を持つ可能性について論じています。

イスラエルでは、泌尿器系のがんの中で最も多い尿路上皮がんに対して細胞毒性を発揮する大麻由来化合物とその組み合わせを特定しようとする研究が行われています。さまざまな大麻抽出物のがんに対する細胞毒性をテストするための分析試料と高性能な液体クロマトグラフィーを使用して抽出物の化学物質含有量を分析した結果、最も毒性の高い抽出物には CBCTHC が含まれていることがわかりました。

2021年 1月に発表されたこの基礎研究の結果は、CBCTHC を組み合わせた場合と CBD 単体の場合のいずれもが、尿路上皮がん細胞の転移を阻害し、細胞死を誘導するということを示唆しています。

希少な植物性カンナビノイド

有用なカンナビノイドを含む植物は大麻草だけではありません。『Plants』誌に掲載されたインドとポーランドの研究チームによる総説は、菌類(グリホリン酸、カンナビオイルシクロメン酸)、苔類(ルヌラル酸、ビタチン)、ツツジ(ダウリクロメン酸、ロド​ダウリクロメン酸)、そしてカンゾウ属とムギワラギク属の顕花植物(アモルフルチン、ビベンジル-CBG)に含まれる、知名度の低いさまざまな植物性カンナビノイドの存在と生合成について論じています。

こうした植物性カンナビノイドは自然界ではごく微量しか産生されませんが、寒さ、暑さ、過剰な光量、紫外線などの非生物的なストレスの軽減や、病原菌や捕食動物から植物を護るのに役立つことが知られている、と論文は述べています。これらの化合物にはまた、治療特性、抗菌作用、抗微生物作用があるため、人間の疾病の治療に役立つ可能性もあります。

自然界において植物がこれらの化合物をどのように合成するのかについてよりよく理解することが、こうした化合物を複製し、医療目的での利用に足る規模で産生する方法を知るきっかけになるだろう、と論文は結論しています。



ネイト・セルテンリッチ(Nate Seltenrich)は、サンフランシスコのベイエリアに住む科学ジャーナリスト。環境問題、神経科学、薬理学を含む幅広いテーマについて執筆している。

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Revision date: 
8月 17, 2021

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